Graduation 〜卒・行〜
【3】Season

〜東京・現在〜

お台場の桜も色付き始めていた。

両隣の○ジTVとTERRA(テラ)コーポレーションのスタジオでは、卒業シーズン真っ只中。

桜ソングや、卒業ソングの特番が組まれ、別れと旅立ちの季節を、華やかに演出していた。



〜警視庁凶悪犯罪対策本部〜

そんな季節感とは無縁の、30階建てのビル。
都内の所轄は、花見や夜の街の騒ぎに、連日連夜振り回されている。

しかし、意外にもこの季節は、凶悪犯罪は比較的少ないシーズンと言えた。

そして、ご多聞にもれず、ここ警視庁特別対策本部、刑事課も手を持て余し、過去の未解決事件に手を出していた。

また、昨年発足からの活躍を認められ、花山警視総監の配慮で、人員も補強されたのである。


「ちょっと皆んな集まってくれ」

刑事部長、富士本恭介《ふじもときょうすけ》が、皆んなを集める。

「あらあら、可愛いじゃない」
ミニスカハイヒールのベテラン刑事、鳳来咲《ほうらいさき》。

「不謹慎ですよ!もう」
真面目でシステム担当の神崎昴《かんざきすばる》。

「マジで狙ってたりしてな」

「こらっ!淳💦すみません」

熱血刑事の宮本淳一《みやもとじゅんいち》と、その妻で心理捜査官の紗夜《さや》。

「まっ!よろしくたのむぜ」
もと公安部の戸澤公紀《こざわきみのり》。

「何気取ってるのよ、カッコつけちゃって」
新しく加わった富士本の秘書兼務で、苗字は違うが戸澤の妻、土屋香織《つちやかおり》。

「初めまして、本庁から配任されました、土門剛志《どもんつよし》です。ここの評判は聞いています。足を引っ張らない様に頑張ります」

「知っての通り、土門刑事の母親は、文京区神田警察署の土門直美《どもんなおみ》所長だ。彼は即戦力になると期待している。皆んなよろしくな」

「了解!」

「紗夜、ここのシステムを含めて、彼を案内してあげてくれ」

「分かりました。土門さん、こちらへ」

紗夜が刑事課のシステムや、仕組みの説明をしながら、フロア内の会議室へ連れて行く。

「凄く近代的ですね、ビックリしました」

「ええ、隣のTERRA(テラ)コーポレーションからの技術支援があって…」

「あのトーイ・ラブさんも、捜査に協力しているとの噂がありますが、本当ですか?」

「そうね…内緒だけど、かなり力になってくれてます。ところで、土門さんは、富士本さんと面識でも?」

「えっ?いえ、直接はないですが、評判は以前から聞いています」

(なぜ…隠す?)
紗夜には、盲目だった頃に身に付いた、読心能力があった。

それを踏まえて、富士本は彼女に案内をたのんだのである。

事実、紗夜は彼の心の奥底に、深い悲しみと闇を感じ取っていたのである。



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