Graduation 〜卒・行〜
【4】再開


〜警視庁特別捜査本部〜

翌日、9:50。
月例の霞ヶ関本庁への報告会議を終え、メンバーが刑事課に戻って来た。

「凄い面々で、驚きました」

改めて、この部署が特別なところであることを認識した土門剛志《どもんつよし》。

「まぁ…今は大きな事件を抱えていねぇから、本庁も穏やかだったが、逆に気持ち悪いくらいだぜ。何か起きねぇかな〜」

「淳!またそんなこと言って」

「淳一さんがボヤくといつも…」

刑事課の電話が鳴った。

咲が取り、直ぐにスピーカーに切り替える。
同時に話しかけていた昴が、システムの定位置に着く。

「はい警視庁刑事課。場所はどこ?」

「中央線中野駅北の二階建て住宅で、不審死2名が発見されました。出動願います」

「特本了解。直ぐに向かうわ!あなた、10秒そのままで!」

既に全員が指示を待っていた。

「紗夜と淳は先に現場へ。戸澤は土門と鑑識連れて向かって。昴は最短ルートをナビへ。全員通信機装着忘れずに!土屋は私と情報を聞き取りましょ」

咲の視線にうなずく富士本。

「お待たせ。発見者は?」

「は、はい。発見者は国立名桜女子高等学校の担任、桜井香澄《さくらいかすみ》。卒業式の代表挨拶予定である生徒が来ておらず、生徒と家族にも連絡が取れないため、自宅へ来たところ、死んでいる両親を発見」

「桜井香澄さんに代わって!」

そう言って、土屋に後をまかせる咲。
富士本が気になった。

「どうしたの部長?青い顔して」

「すまない。さっき、国立名桜女子高等学校の卒業式と言ったな…」

「ええ、でも死んでたのは両親で、あの感じじゃ、生徒は見つかってない様ね」

「つ…土屋君、担任にその生徒は、何番目か聞いてくれ」

「はい?」

「貸して!」

戸惑う土屋から、受話器を奪う咲。

「桜井先生、その生徒は何番目ですか?」

「えっ⁉️」

「えっ、じゃないの!何番目の生徒かって聞いてんのよ❗️」

「10…3番目…か?」
富士本が怯えた声で問う。

「13番目なの?どうなのよ❗️」

「は…はい。確かに13番目に卒業証書を受け取る予定です」

「呪われた旅立ち?」
昴がキーワードから検索した記事を、メインモニターに映した。 

「古い都市伝説ですね。確かに、国立名桜女子高等学校になってます」

「咲、今すぐに、卒業式を中止させるんだ❗️土屋君、一緒に高校へ!」

「は、はい」

慌てて出て行く2人。

(国立名桜女子高等学校…って…まさか⁉️)

「よく聞いて桜井先生。今すぐに連絡して、卒業式を中止しなさい❗️」

「そんな…もう今、卒業証書の授与式が始まった頃です。やめるなんて…」

「いいから早く!死んじゃうわよ❗️」

若い担任も噂は知っていた。
しかし、この状況に於いても信じられない。

「私にそんな権限は…」

「もういい❗️」
電話を切った。

昴が番号を伝え、電話を掛ける咲。
職員室の電話番が出た。

「もしもし、警視庁刑事課です。今すぐ卒業式を中止しないとヒール頭にブッ刺すわよ❗️早く❗️」

「わ、わかりました💦」
あまりの勢いに、電話を放り出して体育館へと走る若い先生。



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