Graduation 〜卒・行〜
そこから暫くは、坂上紫乃譜についての調べや、憶測が飛び交った。

「生徒会長で、成績優秀…まぁ、都内でお茶の水女子と肩並べてる高校だから、皆んな優秀なんだろうけどね」

「何が引っ掛かってんだ、咲?」

(やっぱバレたか…)
「な〜んかね、出来過ぎてんのよね。まるでよくある学園ミステリーみたいで、気に入らないのよ」

「気にいるとか、そう言う問題じゃないだろ」

「ん〜でもね。あからさまに、総理の娘を持ち上げてるけど…実は性根の悪いガキで、阿良宮をイジメていて、学校も生徒も見ぬふりって、パターンじゃん!」

「まぁ…確かにな」

学校の調査に当たった皆んなが、それを感じてはいた。

「富士本さん、彼女の搜索手配は……はぁ〜まだできないか…ちくしょう!」

これでも元弁護士である。
…手がけた案件は1件ではあったが💧

「親の承諾も無しじゃ、3日間はまず無理ね。あんな学校だし、上からも潰されるわ」

「一つ気になることが…」

「何だ?」

「現場をうろついてる年配の人がいて、気がついた時には、もう車で…」

「そいつ、俺も見かけたぞ。ベレー帽に地味〜な服装で、気付いたらもう車で…」

「それって、気付いたじゃなくて、気付かれたのよ。ベレー帽の年配ねぇ…」

富士本の、僅かな反応が気になった咲。
そこへ笹谷が入って来た。

「咲さん、やっと復元できたぜ!」

「マジ❗️やるじゃない。見せて見せて」

全員がパソコン画面に群がる。

「これこれ!」

卒業証書の授与が始まっていた。
最前列で隠し撮りしていた彼女。
映像は、膝の上に置いた手の指の隙間から、見上げる形であった。

次々と卒業生が通り過ぎて行く。

「音声はないのよね〜」

「あっ!坂上紫乃譜(しのぶ)です!」

皆んなの鼓動が早くなるのが分かる。
そして…

「うっわッ⁉️ひでぇ…」

天井から落ちて来た照明機具。
カメラの位置からは、真っ直ぐに見える。

「彼女はここだ。照明はこの辺りで、被害者はここ」

富士本が白板に図を書く。

驚いて逃げ出したのか、取りっぱなしの画像が乱雑に揺れて、現場から遠ざかる。

「いやぁ…見るんじゃなかったな。今夜眠れそうにないや」

「全くだな…ん?」

呟いた辻本が、2人に気付く。
富士本は流れる汗を、ハンカチで拭っている。

「どうしました、2人とも?幽霊でも見たみたいに…」

「…みんなも見たでしょ」

「えっ?何を?」

「幽霊…かな…でもあんなに鮮明に?」

訳の分からない辻本が、笹谷にもう一度再生する様に指示した。

また生徒が次々に過ぎて行き、被害者も続く。

「止めて❗️」

咲の声に驚く皆んな。

「咲さん、そう言うのやめてくださいよ。全くもう。普通に生徒が映ってるだけじゃないですか」

「まだ分からないの❗️普通じゃ、おかしいのよ❗️」

言われて気付いた辻本。

「そ…そうか。被害者の前には、1人分の間があるはず…しかし、映像にはそれがない⁉️」

一瞬にして、恐怖が染み渡った。

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