火の力を持つ国王様は愛も熱い
エドが服を着て出てくるのを待っていると、クローゼットルームの扉が開いた。
「おぉ、似合ってるな、この服は俺が選んだんだ。下着は知らん……あとで確認させろ」
「ふふ…はい、ありがとうございます…とても素敵です」
エドは笑顔で抱き寄せてくれる。
「俺のエマがこんなに可愛いのに自室での食事では勿体ないな」
「そんな事…エドは私の事甘やかし過ぎです」
「甘やかしたくなるくらい愛しいのだから仕方ないだろ…そうだ、今夜は城のテラスで食事をしよう。特別に俺がテラスの熱管理もしてやる」
熱管理とはこの雪国のアヴァンカルド王国のお城では一定の場所は王族の火の力で常に温度管理をされているけれど、人の出入りが少ない部屋などは使用する時だけ装置に火を灯して暖かくする。
それはなかなか難しいようで、ローレンス様が
最近出来るようになって練習で庭園部分を任されている。
エドとは火の力を扱える様になった頃は疎遠だったので私はエドが熱管理をしているところは見た事がない。
お城の殆どの場所は何故か先代の国王様がやられている。
エドにエスコートをして頂いて廊下に出るとエドはすぐに駆けつけてきた護衛兵の方に声を掛けた。
「今からエマとテラスで食事をする。用意するように伝えておけ」
「はっ!畏まりました!それではエイデン様に熱管理の方を…」
エイデン様というのは先代国王陛下のお名前で、王族周辺の従者は皆お名前で呼んでいる。
「父には頼まなくていい。俺がやる」
「え……陛下が…熱管理をされるのかですか?」
かなり驚かれていると同時に不安そうな顔をしていて、私も不安になる。
「そうだ、今から準備する」
エドはそう言って腕まくりをして何故か自信満々に火を出す素振りをしている。
「へ、陛下っ!ここで火を出すのはお止め下さい!」
もう1人の護衛兵が慌ててやって来て止めている。
気になって護衛兵にこっそりと聞いてみる事にした。
「あの…エドワード様が熱管理って」
「…陛下を悪く言いたくないが、エドワード様は仕事は出来るお方だけど、火の力を繊細に操ることに関しては…不器用で…広場の大きな聖火を灯す事は得意としているけど、陛下が学生の頃の練習場所はいつも高温サウナ状態だった…」
「そうだったんですか…」
「それより、エマ。今日は一段と美しいじゃないか!専属メイドといえど陛下と食事を共にするからにはそういった格好をするべきだな…今度オフがあれば街にあるレストランでも」
「おい、いかがわしい目でエマを見るな!」
「そ、その様な目では見ておりません…」
「エマ、行くぞ」
「はい…」
エドに手を引かれてその場を後にした。