火の力を持つ国王様は愛も熱い


テラスへ行くと、晴れていて夜空の星はとても綺麗だけどアヴァンカルド王国の夜はかなり冷える為肌に突き刺さるような寒さだ。

「今、熱を入れるから少し待っていろ」

「エド…やっぱり、エイデン様をお呼びした方が…」

「問題ない、この俺が熱管理くらい出来ないわけがないだろ」

装置の前に行くと、出入口付近に数人の使用人と先代国王様がハラハラした様子でエドを陰から見守っている。

エドがやるって言ったら誰も止められないから…

エドは手のひらを上に向けて集中する。


大丈夫……かな?


するとボッと音を立てて手のひらの上に火の玉が灯り、それだけで辺りが暖かくなった。
エドの体の温度が上がるところは見た事あるけどこうして火を操っているのは初めてで感動する。

「わ……すごいっ…エドの灯す火暖かいね」

「そうだろ…あ、やべ…」

すると、火の玉はみるみると大きくなっていく…こんなに大きいの…?

そうか、エドの火の力は強いから制御するの難しいんだ!

「ク…今、力弱めるから待ってろ…」

「エドッ…大丈夫だから落ち着いて」

私はエドに抱き着いて、火を灯している手の上に自分の手を重ねた。

根拠は無いけど、何となくエドの力の制御をする事が出来るような気がした。

すると、大きくなっていた火の玉が縮んで小さな玉になる。

エドに手を重ねたまま、装置に小さくなった火の玉を掲げるとテラス部分が暖かくなっていく。

同時に吊るされていたランプの灯りも灯る。

「ハァハア……出来た」

「うんっ…夜のテラス素敵だね」

「またエマに助けられたな…エマ…悪い、格好つけようとし過ぎたな…大人しく父上に頼むべきだった…危なくテラスがしばらく高温サウナになるところだった…昔やらかしたんだよ」

すると、陰から見守っていた先代国王陛下が手を叩きながらやって来た。

私は急いで頭を下げた。

「素晴らしい熱管理だったな」

「…はぁ…見てたんだろ?エマのおかげだ」

「方法はどうであれ、今までで一番上手くいっただろう。エマちゃんとは素晴らしい相性じゃないか」

上手く出来た事を褒めに来てくれたんだ…。

「それはそうだが…やはり、俺は熱管理は向いていないな」

「エマちゃんがいれば将来エドでも火の力を使った国務に参加することも出来るだろう」

「私、エドワード様のお力になりたいです」

エドは強過ぎる力が原因で火の力を持つ王族にしか出来ない国務を出来ない事が多くあり、国王なのに出来ない事をずっと悩んでいた。

定かではないけど、私とエドが最後まで身体を重ねたらさっきみたいに火の力を調節出来るのかもしれない。

「そういう話は今は無しだ…水の力の為にエマと結婚したいみたいになるだろ。俺はエマ個人を愛してるから結婚するんだ」

エドはそう言って私の手を握った。

「分かった分かった。この話はまた後日しよう、ほら夕食の支度が出来たようだ」

「エイデン様も御一緒に…」

「いやいや、私は先ほど食事はすませているからね…これで退散させて頂くよ」

先代国王陛下はそう言って城内へと戻って行った。


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