火の力を持つ国王様は愛も熱い
その後、ワイアットさんの回復を待つ間に城内の何処かに製薬室が設けられ、その場所は以前よりも厳重に閉ざされほんの極一部の者しか立ち入る事の出来ないようになる。
製薬所を放火したヴァルのお父さんは未だに捕まっていない。
そして三ヶ月後にはエドの薬の製薬を再開する事が出来るようになった。
「エドワード王様!薬を届けにまいりました!」
アル君が以前と同じ様に薬を届けに来ると、以前に戻った様でなんだかほっとする。
「おう、ありがとうな…飲ませて貰おう」
「ストック分がなくなる前にじいちゃんが復帰して本当に良かったです!俺、これからたっくさん勉強して将来じいちゃんの跡継いでエドワード王様の薬作ります!」
私の力の事はワイアットさんは仕事上伝えるべき人物に入っている為伝わっているけどアル君には薬のストックがあったことになっている。
水の力のヒントを一緒に探してくれたから何も無ければ教えてあげたいけど、こればかりは仕方ない。
するとエドはアル君の頭をポンと撫でた。
「アルが薬師になるの楽しみだな」
「へへっ」
エドはアル君から受け取った薬を飲んだ。
「…ゴクッ……はぁ…ハハッ!相変わらずまっずいな…まずいけど安心する味だ」
「俺が薬師になる時はその辺も改善しますからぁ…あ!リリィだ!エドワード王様失礼します!」
ちょうどリリィ姫様が近くを通るとアル君がすぐに反応した。
アル君はリリィ姫様と同じ学校に通っていて、歳も近いのでよく顔を合わせるみたいで、アル君はリリィ姫様にわかりやすいくらい夢中だった。
「ちょっと、呼び捨てにしないでよ!私、一応姫なのよ?いちいち来なくていいんだけど!」
「えー!なんでそんなこと言うんだよ?俺、リリィの事好きだから喋りたいんだもん」
「好きとか気軽に言わないでよ、ローレンス様に誤解されると面倒なんだから」
「大きくなるまでにローレンス様より俺の事好きになるかもしれないだろ!そしたら俺と結婚しようよ。俺、めちゃくちゃ勉強頑張ってすごい薬剤師になるんだから」
「もう、何回言われてもダメだってば」
二人のそんなやり取りを遠目に見ていると、エドが壁の陰に私の腰を抱き寄せて引き込んだ。
「アルが俺のライバルじゃなくて良かった」
「ふふ…アル君良い子だから少し心動いちゃいそう」
冗談混じりにそう言うとエドがキスをしようとしてきたので急いでパッと止める。
「今日は試薬の日だからダメだよ?」
今日はワイアットさんが復帰して、新しい製薬所で初めて作った薬を検証する為水の力の干渉は避けないといけない。
なので、明日の朝までキスは禁止だ。