火の力を持つ国王様は愛も熱い


「こら、ダズ!こんなところで盛ってんじゃないよ!息子が女に盛ってるところなんて見たくないんだからね」

「じゃあ、俺の部屋連れて行っていい?」

「バカ息子!ちょっとは我慢しな!」

ガンッ

おば様はダズの椅子を蹴った。

「ごめんなさいね?この子可愛い女の子がいるとすぐこうなのよ」

そう言いながらおば様はコンソメスープとサラダを私の前に何故か私の分だけ無造作に出てきた。

「スープと前菜ね、今から肉料理用意するからそれ食べて待っていてちょうだい」

「ありがとう…ございます……いただきます…」

早く食事を済ましてこの家から出なくちゃ…

護衛兵呼びたいけど、何かされたわけじゃないから呼べないし…

サラダとスープを口にすると、ダズはニヤニヤしながら私が食べてるところを横で見ている。

申し訳ないけど、お料理はサラダは何も味付けがなく、スープはコンソメの味はほとんど無くて少し変な味がする。


このディナーって何が目的なんだろう…?


そうだ…1回この席から立とう。
昔と違って虐待されてるわけじゃないし、私には帰る場所も他にあるんだから何も恐れる事はない。

「あ、あの…御手洗に…」

「行ってきな」

「失礼します…」

立ち上がって廊下に出て御手洗の方へと向かう。

御手洗行くふりして1回玄関にいる護衛兵に声掛けよ……あれ……?

突然目眩がして床に座りこんでしまう。

???

おかしいな……意識が……












バシャーンッ!



「んッ……ハッ!」

「いつまで寝てるんだ!?早く起きな!」

「……え?」

私は水をかけられたようでズブ濡れになっていた。

右手首に鎖が繋がれていて鉄格子のついた部屋のベッドに繋がれている。


ここ…何処!?


「ど、どうして…こんなっ…おば様、お願いです!お城へ帰してください!」

「何言っているんだ!?帰すわけないだろ!何が結婚だ!今まで好き勝手やらせてやってたっていうのに礼儀の知らない娘だよ!」

「キャッ…」


バンッ


おば様は私を箒で叩いた。

「……だ、誰かっ!」

ここが家の中なら玄関にいる護衛兵に助けを求めれば…

「助けを呼んでも無駄だよ!護衛の奴らには食事中お前が結婚が嫌で逃げ出したって言ったからね。今頃外を必死になって探してるんじゃないか?」

「そんな…ここが家の中なら捜査が入ります…大事になる前にどうか…ここから出してください…」

「家の中の捜査なら昨晩とっくに入ってるよ!ここは床下に作った牢屋だからね、城の奴らも見つけられなくて笑ったよ…そっちでぶら下がってるじじぃだって匿ってやってたけど城の方で見つけられなかっただろ?」

おば様は笑いながらランプを鉄格子の向こう側へ向けると、誰かが吊るされて…


「は……きゃあああっ!!」

「うるさいうるさい!いちいち騒ぐんじゃないよ!」

首から吊るされていた人物は紛れもなく以前製薬所を焼き払って行方不明になっていたヴァルのお父さんの亡骸だった。

「ふゥッ……どうして……」

「あの男、匿ってやったっていうのに全然役に立ちやしないんだよ。お前が国王のお気に入りで今夜国王が留守にする情報を集めたは良いけど姿を見られるミスをしたんだ。うちだって危険を犯して匿ってやってんのに、そんなの生かしておけないだろ?」

まさか…こんな事するほどの人だっただなんて…

簡単に騙されてしまった自分の甘さにも腹が立つ。

怖くて…悔しくて…涙が止まらない。

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