火の力を持つ国王様は愛も熱い
水の力の暴走
~エドワードside~
貿易商との会議が第二港で行われ、視察や報告等港ではかなり仕事が立て込んでしまい、予定時刻より戻るのが1日ズレてしまった。
夜のうちに城へと向かう事にした。
「そんなに急がずとも一晩港の宿で休んでから出発してもよろしかったのでは?港では働き詰めでお疲れでしょうに」
「国王であるがゆえ、何日も城を開けていられないからな」
建前ではそう言うが、一番はエマと離れていたくないのが本音だ。
自分でも呆れるくらいエマにベタ惚れしていて、この間にも他の男がエマを狙っているかもしれないと思うと気が気でない。
以前、リリィ姫を迎え入れた最も遠い第一港ではなかっただけありがたい。
朝には到着するはずだ。
エマが待つ城に帰るのが楽しみで仕方ない。
流石に港での仕事の疲れでそこから間もなく目を閉じて眠っていた。
深夜。
まだ城へは着いていないはずだか、突然馬車が止まった事で目が覚めた。
「どうかしたのか?」
馬車の外に城から馬で来た伝令兵がいる。
「国王陛下…」
伝令兵は慌てた様子で俺に挨拶をしようとする。
「挨拶はかまわん、要件を先に」
「はっ…国王陛下の専属メイドのエマですが、昨晩行方不明となり現在捜索中。急ぎ国王陛下へと伝えよと命があり仕りました」
「何!?エマが!?行方不明ってどういう事だ!?」
「現状況でわかっている事は…先日身元引受け人の家のディナーへ招待され、ディナーの最中に逃走との事。身元引受け人の証言によると現在の婚約の事で相当悩んでいた為解消すべく裏口から逃走する手助けをしたとの証言があります」
エマが俺との結婚に悩んで……
そういえば身分の差をかなり気にしていた。
選択肢は与えていたつもりだが、強引に進めたと思われても立場上仕方ないかもしれんが…
しかし、俺の中ではエマの身元引受け人には良い印象が全くない。
エマの結婚の話が拗れるようなら昔父上がエマを城に雇う際に交わさせた契約書を使って上手く縁を切らせるつもりだった。
そして、現在身元引受け人の家についてはエマとの親戚関係にあたるとあったが、どの程度の親戚であったのか、エマを引き取った経緯について深く調査を行っている最中である。
エマの意思での逃亡だとしても、身元引受け人の事は全く信用出来ない。
俺は急いで馬車を降りた。
「国王陛下…?」
「馬を貸せ。俺はこのまま馬で行方不明になった場所へ向かう、お前は馬車で他の者達と戻れ」
「それはなりません!国王陛下が護衛もなしに…私がすぐに戻り捜索隊を増員させますので国王陛下は馬車へお戻りください!」
「はぁ……悪いが、国王の権限を使わせてもらう。国王命令だ、馬を貸せ」
「ッ………」
そう言うと、伝令兵は口をギュッと閉じて馬から降りて手綱を俺に渡した。
手綱を取るとすぐに馬に乗り込む。
「俺の我儘を許してくれ…道中護衛は必要ない。何かあれば火の力を使う」
「……畏まりました。国王陛下……くれぐれも道中お気を付けて…」
「あぁ、お前の愛馬は悪いようにはしないと約束しよう」
俺はとにかく急ぎ街へと向かった。