火の力を持つ国王様は愛も熱い


浮いてる何かと一緒に引き寄せる。


「今すぐに引き上げる。そのまま落ち着いて暴れずに掴まっていろ」

「寒……早く…助け……ガチガチガチ…」


エマの事がかなり心配ではあるが、まずは事情を聞くにしても目の前の男を助けなければ…

浮いているモノが何なのか暗くてわからないが、感触でなんとなくだが人の死体の様に感じる…。

明るいところまでいくまで確証はないが、体格からしてエマではない。

浮いているモノを引いて、床板が外れている場所へ行き死体とそれにしがみつく男を上で待機している兵士が引き上げ、俺も一度外へと出る。

「この男は!逃走中の商会長…」

「何故こんなところに!?」

死体の事よりも先に俺は震えている男の服を掴みかかった。

「エマは何処だ!?さっさと答えろ!」

「バッ……あの女っ…化け物!あの女が地下を溢れさせて俺を殺そうとした!鎖で繋いでるから溺れて死んでるんじゃね!?良い気味だ!」

「おい…この男連れて行け、監禁の容疑で捕らえておけ」

エマはまだ下にいるという事だ…

俺は手のひらに火を発生させ、再び水に飛び込んだ。

「国王陛下ッ!あぁ!また勝手に…」

発生させた火を水につけた事はなかったが、火が消える事はなく辺りを照らした。

火の明かりを使い、地下への底の方へと潜水で潜りエマを探す。


地下の範囲はそこまで広くはない。


鉄格子があり、その内側にボロボロのベッドに手首が繋がった人の影が見える。


体は浮こうとして上に向かって揺れている。


エマだ…


服がボロボロに引き裂かれていて急いで火の玉を水中に浮かせて体を引き寄せ抱き締める。


体が冷たい…嘘だろ……


恐怖などの過度な感情の起伏で水の力が暴走したのか…?


エマを守る事が出来なかった事が悔しく、強く抱き締める。


息が苦しくなって来た…


俺も…エマの後追うか……


それで、今度生まれ変わったらなんのしがらみもなく結ばれる関係に…


強く抱き締め、エマの唇に口付けをすると不思議な事に口から空気が入ってくる。


そういえば何かエマの体に違和感を感じる。


触れても肌に触れているような感覚がなく、エマの体の周りに空気の膜が張られているようだった。


俺はエマの体を離れないように抱き寄せると、再び手のひらに火の玉を灯し、いつも抑えている力を強めエマに鎖で繋がっているベッドに向かい火の玉を解き放つとベッドは壊れ、その衝撃の反動で俺とエマは水面へと浮き上がった。


「国王陛下ーッ!」

「兄上入ってからどのくらい経ってる!?僕が助けに行くから!」

「ちょっと!ローレンス様まで何かあったらどうするの!?海岸育ちの私が行く!」

「ローレンス様!リリィ様もお待ちください!」

「おい!手を止めるな!絶対助け…あ」

水面へ浮き上がると、兵士達が泣きながらバケツリレーで地下の水を汲み上げている所だった。

ローレンスとリリィ姫も来ていて、今まさに水に飛び込もうとしている所だった。

水の中に入って作業するなんてないこの国で一般人が冷水に入るなんて到底無理ではあるが、皆が必死で俺を助けようとしてくれていた事に一気に緊張が解ける。


「ハァハァ…俺は大丈夫だ……すぐにタオルを用意してくれ、エマを…」

「エマさんっ!タオルあります!」

エマを引き上げるとリリィ姫がすぐにエマの身体をタオルで隠した。

「エドワード王様ぁ…エマさんの体冷たい…」

「恐らく水は飲んでいない、俺がすぐ暖める…」

「兄さん、水中にかなり大きい火の玉見えたけど…かなり体力消耗してるんじゃ…僕が代わるよ」

「いや、俺がやる……」


火の力の燃費はかなり悪い。
いくら俺の火の力が強いとはいえ、今は力を使い過ぎて意識が飛びそうだが…俺がエマを助けたい。

気合いで体温を上げて冷えきっているエマを抱き締めエマを暖める。

< 122 / 162 >

この作品をシェア

pagetop