火の力を持つ国王様は愛も熱い
1年後。
「エマーッ!本っ当よく頑張ったな!代わってられなくてごめん……クッ…」
エドは息を切らして力尽きそうになっている私の手をギュッと握って泣いている。
「ハァハァ……エド……泣かないで…赤ちゃんは…二人とも元気?」
「問題ない!今はエマの体が心配だ!」
「エドワード王様…エマ様のお体がご心配なのはわかりますが、あまり騒がれてはエマ様も休めないかと」
「ああぁ!そうだよな?」
そう…今、まさに出産の直後だった。
エドと私は言い伝え通り双子の赤ちゃんを授かった。
出産を終えると赤ちゃんはすぐにフォースの検査に連れて行かれてしまう。
出産前に説明があったけど、頑張って産んだ赤ちゃんとすぐに会えないのはすごく不安だ。
出産は半日以上掛かって今にも気を失いそうなくらい疲れきっているけど、赤ちゃんが検査を終えるまでは気を抜けない。
エドも周りの助産師さんやお医者様も私にずっと着いていて励まし続けてくれたから今疲れきってるのは私だけじゃないしもう少し頑張らくちゃ…
「エマ、出産でかなり疲れてるだろ。子供達は俺に任せて休むといい」
「ううん…検査が終わるまで待ちたいの。二人のお顔を見るまで休めないもの」
「ハハッ…そうだよな、俺も今二人のことが心配で仕方ない…検査の方あとどのくらい掛かるか確認してくるよ」
エドは優しく微笑んで私の頭を撫でると二人の検査の様子を見に行った。
そして、エドが見に行ってから間もなくして、エドが可動式のベビーベッドを二つ引いて、フォースの検査をしてくれる専門のお医者様と共に戻ってきた。
「エマ、ほら二人とも元気だ」
二人は男女の双子で性別がわかるようにピンクと水色のお包みに包まれていて特に娘の方が元気に泣いていた。
「おーおー!お前は特に元気だな?ほら、俺がパパだぞ」
ベッドの脇まで連れて来てくれるとエドはよく泣いてる娘を抱っこしてあやし始める。
助産師さんが息子を抱き上げて私のところへ連れて来てくれて、抱っこをすると私のことをジッと見つめてくる。
「可愛い…ママですよぉ」
エドは娘も見えるように抱えて私の隣りに座ってくれてようやく二人と対面する事が出来た。
「エドワード様、エマ様。ご出産おめでとうございます。早速ではございますが、フォースの検査結果を申し上げます」
「あぁ、そうだったな。頼む」
「検査の結果。ご子息様が水の力、ご息女様が火の力のフォースを授かっておいでです」
「そうか!それじゃあ、この元気な泣きっぷりは俺に似たんだな!」
エドは嬉しそうにそう言った。
「…ですが、エドワード様、本国では王位継承順位の優先順位と致しまして火のフォースを持つ者が優勢となりますので、本来男子の方が優勢となりますが…残念ですがご子息様は火の力をお持ちでないので…申し訳にくいのですが…」
「俺の息子は立派な水の力を授かって生まれたんだ。残念も何もないだろ」
「大変申し訳ございません!」
王位継承順位の件は確かに私も頭を過ぎった。
国王の長男であっても王位継承権を持つ事が出来ないのは事実ではあるけど、息子の顔を見るとエドの言うように立派に元気に生まれてきてくれたこんなにも可愛い子をそんな風に思われてしまうのは悲しい…
私に水の力があるからそう思わせてしまう責任も感じてしまう。
部屋に私とエドと子供達になり、二人の健やかな顔を見ると出産の疲労なんてどこかへいってしまった。
「俺達の子供可愛すぎるだろ」
エドは二人の頬をつんつんとつつきながらそう呟いた。
「ね、二人ともすごく可愛い…私達親バカになっちゃいそうだね」
「こんな可愛いのにならないわけないだろ!あー…さっきのフォースの事だけどな。この国は火の王国であるから火の力がなければ王にはなれないのは事実だが、俺は将来の事はこの子達の意志をしてやろうと思ってる。息子が王になりたいと願うなら小さくても水の国を作って王にすることも出来るし、娘が女王になりたくないと言えば王をやる意志のある王族が現れるまで俺が国王であり続けるよ…自分の子供に甘過ぎるけど、二人には本来必要ないコンプレックスやしがらみのない人生を歩んで欲しいから道筋は作るつもりだ」
「エド…」
「流石に自分の子供に甘過ぎるとは思うけどな!教育やしつけはしっかりするぞ?俺が勝手に考えただけだから反対意見があれば、エマの意見も尊重したい」
「そんな覚悟を持ってくれてたなんてビックリしちゃった…エドが話してくれた環境で育てたい。私も一緒にそういう環境作りたい」
二人には私達の子供に生まれてよかったと思ってもらいたい。
「あぁ、一緒に作ろう……そうだ、まずはこの二人の名前を決めないとな」
元々の候補もあって、少し時間は掛かったけど息子は「アクア」娘は「アリス」と名付けた。
どうか、この子達が健やかに幸せにくらせますように。
END
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