火の力を持つ国王様は愛も熱い
出口に近付くにつれて煙の臭いが強くなる。
まさか…最悪の事態は起きて欲しくない!
アル君がツタで隠されている出口に繋がる扉を開けているところで追いついた。
扉が開くと煙が入ってくる。
「エマ!ヴァル!煙吸っちゃダメだ!服で鼻と口押さえてすぐ出て!」
急いで外に出て扉を閉めた。
「嘘……だろ……」
洞窟を抜けた先は山間に繋がっていて湖の脇にあった製薬所であるアル君の家が勢い良く燃えている…。
「……じいちゃんっ!じいちゃんーっ!何処にいるんだよ!?」
アル君は炎に包まれた家に近付こうとしたので急いで止めた。
「アル君!近付いちゃ駄目っ!」
「でも!じいちゃんが!」
「……嘘だろ……親父がやったんじゃない……よな?」
すると、家の方から誰かが出てきて雪山の方へヴァルのお父さんが逃げる様に走って行くのが見えた…
それは勿論ヴァルにも見えていて、ヴァルは絶望に満ちた表情をして立ち尽くしていた。
アル君のお爺さんの安否も分からないし、ここの製薬所が燃えてしまってアル君のお爺さんがまだ中にいたら……エドワード王様の薬は……?
頭が回らず、私は必死でアル君を止める事しか出来なかった。
「……だ……誰か………」
家の中から微かに声が聞こえた。
「じいちゃん!エマ!行かせて!じいちゃんの声が!」
「だ、だめっ!アル君は絶対行っちゃだめ!行くなら私が行くから!」
「アルフレッド……エマ……父が取り返しのつかない事して申し訳ない…」
すると、隣りで立ち尽くしていたヴァルが走り出した。
「ヴァルっ!?」
近くの雪を体に付け、手で持てるだけ持って正面の扉を蹴り破ると中へと入って行った。