火の力を持つ国王様は愛も熱い
そして…
「それではリリィ姫様…どうかお幸せに」
私は馬車に乗り込もうとするカイルに抱き着いた。
絶対泣かないって思っていたのに、抱き着いた瞬間に涙がポロポロと溢れてしまう。
「カイル……ヒグッ……今までたくさん迷惑掛けてごめんなさい……」
「迷惑だなんて全く思っておりませんよ、意地っ張りだけど心優しく、可愛い姫様と過ごした日々はとても幸せでした。至らないところもございましたが今までありがとうございました…」
「ヒックッ……こちらこそ……ありがとう……サシャールに到着したらすぐにお手紙してね?絶対よ?」
「勿論でございます…ローレンス様」
「はい」
「どうかリリィ姫様をよろしくお願い致します」
「はい、サシャールの大事な姫様は一生掛けて愛し、大事にしていきますのでどうか御安心ください」
ローレンス様は私の肩に手を添えた。
まだ別れは惜しいけど、カイルから離れるとカイルは涙を流しながら馬車に乗り込んで去って行った。
馬車が見えなくなるまで見送る間ローレンス様は隣りに寄り添っていてくれた。
「それじゃあ、戻ろうか。気持ちが落ち着いたら先日の城の案内の続きと、午後からこれから通う学校の学園長から学校の事について説明を受けてもらうよ」
「はい…」
またローレンス様に手を繋がれてお城の中へと戻る。
……ローレンス様なら好きになっても大丈夫……かな?
お城の自室のある廊下に差し掛かった時だ。
前から綺麗な胸の大きい女性とその隣りにその女性を制止しようとしている女性が怒った様子でこっちに向かってきた。
「ちょっと…今はダメだって…リリィ姫様いらっしゃるのに…」
「離してっ!そんなの関係ないわ!」
この辺りは限られた人しか入れないからローレンス様の知ってる方?
するとローレンス様の前にその人は立ちはだかった。
美人でスタイルが良く、大人の色気がたっぷり……
「ローレンス様、二度も女性の誘いを断るなんて私納得出来ません…今夜までもお断り致しませんよね?」
「!?」
や……やっぱりローレンス様……
ローレンス様は私の手を離すとその怒っている女性の頭をポンポンと撫でた。
その行為に胸が張り裂けそうなくらい苛立ちを覚えた。
「ごめん、女性の誘いを断るなんて有り得ないのはわかっているけど…元々僕の婚約者が正式に決まるまでって決めていただろ?」
「決まってる人がいたなんて聞いてません!それにあんなまだ幼さの残る子にローレンス様の性欲を満たせるなんて思えません!」
性欲…!?
ローレンス様…あんな大人の女性と……
「国家上内密のことだってあるよ、勘違いさせてしまっていたなら申し訳ない」
「それにまだ御結婚されてるわけではありませんし…引き続き夜のお相手したいのですが?」
その人は私の存在なんて無視するかのようにローレンス様に抱き着いてそう言った。
やっぱり…やっぱり、やっぱり!!
ローレンス様は浮気男だ!
「……ローレンス様。この後のお城の御案内して頂かなくて結構です!午後の学園長のお話も一人で行きますので!夜もそちらの方とご自由にお過ごしください!」
「リリィ姫、ちょっと待っ」
「嫌いですっ!初キス返してください!」
私はそう言い放って自室へと駆け込んだ。
ちょっとでも好きかもって思った私が馬鹿だった。
もう…最悪……