あなたを憎んでいる…でも、どうしようもなく愛してる
その日の夜、私は勇気を振り絞り、行動してみることにした。
悠斗さんからは、マンションの鍵を渡されている。
もし、まだ悠斗さんが帰ってなくても、マンションで待つことにしたのだ。
“ピンポーン”
部屋のベルを鳴らすが、やはりまだ悠斗さんは戻っていないようだ。
私は部屋の鍵を取り出して、恐るおそる鍵を開けた。
縦長の大きなドアノブを持ち、一度深呼吸。
手に力を入れようとしたその時、後ろから声が聞こえたのだ。
「桜…どうしたんだ?」
ちょうど、悠斗さんも帰って来たようだ。
しかし、悠斗さんの後ろには…アランの姿があった。
心臓がドクンと大きく弾ける。
「あ…あの…アランさんもご一緒なのですね…私はお邪魔みたいなので…今日は失礼いたします。」
私が慌てて踵を返して走り出そうとした時、悠斗さんが私の腕を掴んだのだ。
「桜、なんで逃げるんだ!」
そんなことを私に言わせたいのだろうか。
胸が苦しくなる。
「だって…悠斗さんは…アランさんと二人きりになりたいでしょ!」
「…はぁ?桜、もしかして…アランの事を勘違いしていないか?」
「…勘違い?」
すると、アランは私達を見てケラケラと楽しそうに笑いだしたのだ。
何が可笑しいのだろうか。
悔しさでどうにかなってしまいそうだった。
すると、アランは今までとは全く違う声で話し始めたのだ。
その声は、低く男性のような声だ。
「ここまで素直に騙されるなんて…可愛いよね!さすが悠斗の選んだ女性だね。」
「えっ?」
「俺、実は男なんだよ…ごめんね、早く言わなくて…」
「アランさんが…男性?」
信じられない。こんなに美しい女性のアランが本当に男性なのだろうか。