あなたを憎んでいる…でも、どうしようもなく愛してる
挨拶
アランの一件から一週間後。
終業時間を少し過ぎた頃、珍しく悠斗さんからからメールが来た。
『今日は何時ころ会社を出られるかな?』
今日は金曜日。
なかなか時間が取れず、行かれなかった買い物に行く予定だった。
そのため、ちょうど仕事も切り上げようと、思っていたところだった。
『すぐにでも会社を出られますが、どうなさいましたか?』
返事を送信すると、すぐに電話が掛かって来た。
私は席を離れて、廊下へ急いだ。
「桜、実は急な話で申し訳ないが、俺の両親が海外から戻って来て、こちらに向かっているらしい。ちょうど良い機会だから、今日はマンションに来てくれないかな。」
「はい。私もお会いするのは楽しみです。」
悠斗さんのご両親が海外に行っていたことも知らなかった。
しかし、考えてみたら、初めてのご挨拶ということになる。
なんだか急に緊張してきた。
私はお気に入りの洋菓子店で、シュークリームと焼き菓子をお土産として選び、持って行くことにした。
このシュークリームは、粒々のバニラがアクセントになり、一度食べたら癖になる味なのだ。
もちろん私も大好きな味である。
焼き菓子のマドレーヌも、レモンの風味が効いていて絶品なのだ。
…気に入ってくださると良いのだけど…
マンションに到着した私は、呼び鈴を押そうと思うが、緊張で手が冷たくなってくる。
頭や顔からも血の気が引いて行くのがわかった。