あなたを憎んでいる…でも、どうしようもなく愛してる
まさに奇跡だ。
車椅子が倒れた衝撃で、父は記憶を取り戻したのだ。
「お父さん…よかった!」
私は泣きながら父に抱き着くと、父は頭を撫でながら話してくれた。
「桜、…本当にすまない…父親失格だな。俺はお前たちから逃げてしまったんだ。謝っても謝り切れないな…」
私は父の胸に顔を埋めながら、顔を横に振った。
「お父さん…生きていてくれただけで十分だよ。」
こんなに嬉しいことは無い。
行方不明になってから、もう7年になる。
そろそろ諦めなくてはと、思っていたところだった。
しかし、父は生きていた。それに今、記憶も取り戻してくれたのだ。
こんな事があるのだろうか。嬉しいが、逆に夢ではないかと怖くなるほどだ。
「…桜、父さんは、誰が病院に入れてくれたんだ?今まで面倒を見てくれたのは、桜なのか?」
私は、父の目をジッと見ながら話をした。
「違うよ…お父さん。お父さんの面倒を見てくれたのは、神宮寺さんだよ。すごく責任も感じてくれているんだ。」
すると、父は少しの沈黙の後、優しい微笑を浮べた。
「やはりそうだったんだ。父さんは夢の中で、神宮寺君の声をきいていたんだ。そして、会社が潰れたのも、神宮寺君のせいではないと、分かっていたんだ。彼は何も悪くないのに、責任を感じているのだろう。」