あなたを憎んでいる…でも、どうしようもなく愛してる
偽装の恋人
病院からの帰りは、車で来ていた神宮寺が送ってくれる事となった。
神宮寺は暫く車を走らせていたが、急に何かを思い出したようにこちらを向いた。
「伊織、…いいやプライベートは名前だな…桜、早速で悪いが、俺の友人にこれから会うのだが、一緒に来てくれないか?…もちろん恋人として。」
「神宮寺社長、本当に私なんかで良いのですか?お相手なら、とても綺麗な女性が社長のまわりには沢山いらっしゃいますよね?」
すると、神宮寺は片眉を上げて、悪戯な表情をした。
「桜、…まさか、もうやきもちを妬いているのか?」
「そ…そういう意味ではありません!」
「安心しろ、俺は特定な彼女は作らない事にしている。いろいろ面倒だからな。だからお前がちょうど良い。…それと、プライベートはお前も俺を名前で呼んでくれ。…悠斗だ。」
「ゆ…ゆ…ゆう…とさん」
「桜、…お前は中学生か?名前を呼ぶくらいで緊張するな。」
神宮寺はいつも驚くようなことを、突然に言ってくる。
本当に何を考えているのか分からず、掴み所が無い。
それに、私が神宮寺の恋人役を演じられるのか、不安になる。
恥ずかしい話だが、男性と付き合ったのは、学生以来だ。
神宮寺に復讐するため、近づける能力をつけるので忙しかったので恋人どころではなかったのだ。
神宮寺は私の答えを聞く前に、勝手に決めてしまう。
どうやら、もう逃げられそうにない。