あなたを憎んでいる…でも、どうしようもなく愛してる
速水が神宮寺に向かって、少し揶揄っているように話をすると、神宮寺は珍しく照れているのか、片手で口元を覆った。
気のせいか頬が少し赤いように見える。
「速水、うるさいぞ…診察が終わったら、出て行ってくれ。」
「はい、はい、邪魔者は退散しますよ。」
速水は嬉しそうにケラケラと笑いながら、看護師と一緒に病室から出て行った。
すると、須藤が私の肩をポンと叩いた。
「伊織さん、今日は会社に戻らなくて良いので、このまま神宮寺を頼むよ。それに、会社からの連絡もあるから、君がここに居てくれた方が助かる。」
「須藤さん…で…でも…」
須藤は、何か言おうとした私に向かって、子供を黙らせるように、頭をポンポンと叩いて微笑んだ。
そして、須藤は神宮寺のベッドのすぐ横に近づき、真面目な表情をした。
「神宮寺、今回は無事だったが、進藤は娘の祥子を溺愛している。だから、どんな手を使っても、お前と結婚したいと言う祥子の望みを叶えてやろうとするだろうな。…気をつけろよ。」
「あぁ、気を付けるよ。」
神宮寺は須藤に向かって頷いた。
須藤は神宮寺への話が済むと、そのまま病室のドアに向かって歩いて行った。
「伊織さん、社長をお願いしますね。」
須藤は扉を開けると、こちらに向かってヒラヒラと手を振り、笑顔を見せた。