あなたを憎んでいる…でも、どうしようもなく愛してる
私は神宮寺の言葉に驚き、振り返った。
てっきり、神宮寺はふざけた表情をしているだろうと思ったが、今回は違っていた。
真っすぐに私を見ている。
「あの…なぜ…そんな事を言うのですか?」
「今回のことで、考えたんだ…俺が独身でいる限り、進藤親子は付き纏ってくるだろう…だから、結婚していれば、もう追いかけることは出来ないだろ。」
「…そのために、私を利用するのですか?」
神宮寺は、少しの沈黙のあと、ゆっくりと言葉を出した。
「…桜、確かに俺はお前を利用しようと思った。…俺はずるい男だから、そうすればお前と結婚できると思ったんだ。」
「…意味が…まったく分かりません。」
神宮寺はベッドから起き上がり、立ち上がろうとしている。
ベッドに手を掛けて、立ち上がろうとベッドを降りた。
しかし、まだふらつきがあるようで、立ち上がった瞬間、神宮寺がよろめいた。
私は、咄嗟に神宮寺に駆け寄り、神宮寺を支えた。
すると、神宮寺はそのまま私を抱きしめるように寄りかかった。
「…社長、大丈夫ですか?」
「…桜、お前は俺をまだ許すことは出来ないし、恨んでいるかもしれないが、俺は必ずお前を幸せにする。」
その時、私はあることに気が付いてしまった。
「…私は今、気づきました…私に責任を感じているのですね…同情だったら…お断りします。私を愛しく思うと言ってくださったのも、あなたの同情からくる、ご自分の錯覚かも知れませんね。」
「…桜…違う…」
私は神宮寺を自分から離れるように両手で押した。
そして、ベッドに神宮寺を座らせ、そのまま後ろを向いた。
「何か、飲み物でも買ってきますね。」