あなたを憎んでいる…でも、どうしようもなく愛してる
速水の言っていた言葉が、ぐるぐると頭の中で回っている。
神宮寺は、私を同情しているだけなのだろうか…それとも…。
それから、どのくらい時間が経っただろう、ベンチから動けずにいた私の携帯電話が、着信の音を鳴らした。
電話は秘書の須藤だ。
「はい。伊織です。」
「伊織さん、大変だぞ…今さっき進藤親子が会社に来たんだ。もちろん神宮寺の居る場所は教えなかったが、進藤がいろいろ嗅ぎまわっているから、速水の病院を突き止めるのも時間の問題かもしれないな。気を付けてくれ。」
私は電話を切ると、慌てて神宮寺のいる病室へと急いだ。
神宮寺は寝ているかも知れないと思い、ノックをせずにそっと静かにドアを開けた。
そして足音を立てないように、そっとベッドに近づいてみると、思った通り神宮寺は眠っている。
もう何度も神宮寺の寝顔は見ているが、端正な美しい顔に、思わず心臓がドクンと大きな音を立てる。
よく見ると、長い睫毛はマスカラをしているように、長く美しいカーブを描いている。
眉も天然なのだろうか、綺麗なアーチの眉は、男らしい形をつくっている。
高い鼻筋に、引き締まった薄い口元。
どこを見ても完璧な神宮寺の顔には、思わず見惚れてしまう。
すると、間もなくして何か気配を感じたのか、神宮寺が目を覚ました。
ゆっくりと目を開けた神宮寺は、横に立っていた私に気が付き、驚いた表情をした。