あなたを憎んでいる…でも、どうしようもなく愛してる
「桜、後悔はしていないか?」
「はい。これであなたに父の面倒を見てくださった恩返しができます。」
神宮寺が、もし同情で私を幸せにすると言うのであれば、私もこれまで父の面倒を見てくれた恩返しができると思ったほうが良い。
そう思っていないと…私は神宮寺を愛してしまう。
まだ、神宮寺の気持ちに確信が持てない私は、自分の気持ちにブレーキを掛けた。
後で悲しい想いはしたくない。
私達はもう一度、須藤に送ってもらい、速水の病院へと戻っていた。
「神宮寺社長…まだ身体も万全ではないので、お休みください。」
神宮寺は頷きながら私を見た。
「桜、これからは二人きりの時には、神宮寺社長は止めてくれ…悠斗だ。それにもう、お前だって神宮寺だぞ。」
言われてみれば、結婚したのだから、私も神宮寺なのだ。
それを考えた途端になんだか恥ずかしくなる。
暫くして、病室のドアをノックする音がした。
私達は、てっきり速水か須藤だろうと思い、返事をした。
「はい。どうぞ入ってください。」
そして病室のドアがゆっくりと開けられた。