あなたを憎んでいる…でも、どうしようもなく愛してる


「神宮寺君、体調はどうかな?」


ドアが開き、聞き慣れない声に驚いた。

私達は、急ぎドアの方を見ると、そこには、祥子と進藤の姿があった。
声を出していたのは、祥子の父親、進藤だった。

一緒に病室へと入って来た祥子は、クスクスと不気味な笑いを浮べなが、神宮寺に近づいてきた。


「悠斗、…挨拶もなく、黙って帰ってしまうなんて…酷いじゃない…でもこんな事では、私は諦めないわよ。」


さらに祥子は鋭い目で私を見た。


「私はずっとずっと前から悠斗を見て来たのよ…あなたになんて渡せないわ…悠斗に相応しいのは私なのよ。私はあなたより悠斗を愛しているわ!」


そして、父親の進藤は、ゆっくりと神宮寺のベッドの横に近づいた。


「神宮寺君、君にとっても進藤グループの傘下に入れば、プラスになることも多いはずだぞ…祥子との縁談は悪い話ではないはずだ。」


それまで何も言わずに、目を閉じて聞いていた神宮寺がゆっくり目を開けた。


「進藤さん、ご心配頂きありがとうございます。…あいにく進藤グループに入れて頂かなくても、会社は順調です。…それに、お二人には大切なご報告があります。」

「報告だと?」


進藤親子は、神宮寺が何を言い出すのかと、不思議そうな顔をした。


「…僕はすでに結婚しました。」


神宮寺は、封筒に入っている一枚の紙を取り出した。


「これが、結婚届受理証明書です。どうぞご覧ください。」


祥子の父親は、驚いた顔で神宮寺の差し出した紙を受け取った。


「な…な…なんだこれは…お前たち、本当に結婚したのか!」



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