あなたを憎んでいる…でも、どうしようもなく愛してる
「なによ!こんな偽装結婚なんて…認めないわ。私は諦めないわよ。」
祥子は神宮寺に向かって大きな声を上げた。
さらに、私の方へと近づき、目の前に立った。
「あなたは勘違いしないほうが良いわよ…悠斗はあなたを愛していないわ。タダの偽装結婚よ!」
私を真っすぐに睨んだ祥子は肩で息をするほど興奮しているようだ。
「祥子さん、安心してください。私だって愛されて結婚したわけじゃない事くらい、分かっております。……でも、私はすでに神宮寺の妻です。覚えておいてください。」
私は自分の言った言葉に驚いた。
いつもの私なら、こんなに堂々と意見を凛とした表情で言えないはずだ。
恐らく…神宮寺のために、自分が出来ることをしたい。
愛が偽物でも、神宮寺の役に立ちたいという気持ちが、私を強くしたようだ。
祥子は私の言葉を聞いて、さらに両手を握りしめてフルフルと震えた。
しかし、祥子はそれ以上何も言わず、病室を出て行こうとする。