あなたを憎んでいる…でも、どうしようもなく愛してる
「つ…付き合って…いる人は、いません。」
嘘はついていない。
結婚はしていても、付き合ってはいないのだ。
「桜ちゃん…嘘が下手だよね。」
「嘘じゃありません。」
すると、鳴海は目を細めて微笑んだ。
「…まぁ、どっちでも良いよ。…でも、僕は桜ちゃんが気に入ったんだ。振り向いてもらうまで、諦めないからね。」
「申し訳ありませんが…貴方を好きになることは無いと思います。」
「桜ちゃんは、手強いなぁ…でも、強気の女性もけっこう好きだよ。」
鳴海は何を考えているのだろうか。
返す言葉が無く、暫く沈黙していると、私の携帯電話が鳴りだした。
会社からの緊急もあるので、携帯の音は切らないようにしている。
私の携帯の呼び出し音に気が付いた鳴海が、微笑んだ。
「僕は気にしないから、電話に出なよ…緊急かも知れないからね。」