あなたを憎んでいる…でも、どうしようもなく愛してる
じっと悠斗さんの姿を見つめるお母さんに、悠斗さんの紹介をする。
「こちらは、私が働いている会社の社長で、神宮寺悠斗さんです。」
お母さんは、みるみるうちに表情を曇らせた。
「じ…神宮寺?」
すると、悠斗さんも母に向かって挨拶をした。
「大変、ご無沙汰しております。神宮寺悠斗です。」
悠斗さんが自分の名前を名乗ると、お母さんはいきなりベッドから身を乗り出すようにして、大きな声をあげた。
「まさか…あの神宮寺さん?…よくも、ここへ、のこのこと平気な顔で来れたわね。」
お母さんは、ベッドのサイドテーブルに置いてあった、大好きな推理小説の単行本を、悠斗さんに向かって投げつけたのだ。
投げられた単行本は、悠斗さんの肩辺りにぶつかり、床に滑り落ちた。
それでも、悠斗さんは、頭を下げたまま動かずにいる。
「お母さん、止めて!」