あなたを憎んでいる…でも、どうしようもなく愛してる
何を言っても、お母さんは聞こうともしてくれない。
「桜、…早く、この男を追い出してちょうだい。」
「…お母さんお願い。どうか私と一緒に来て欲しいところがあるの。そうすれば、全てがわかるから。」
「どこへ行けと言うの?」
母は私に向かって、不振な顔を向けた。
怒りをぶつけるような表情をしている。
こんな顔をするお母さんを私は初めて見たかも知れない。
嫌がる母を、私は少し強引に車椅子へと乗せた。
「お母さん、お願い…私を信じて欲しいの。」
何も言わず、固く目を閉じているお母さんの車椅子を押して、私は悠斗さんの車の後部座席へ母を乗せたのだ。
お母さんは、車に乗っても、何も言わず、ただ走る車の窓から外をじっと見つめている。