おおっぴらでひそやかな、恋の伝え方
うっ、申し訳ない。その通りすぎる。
「別に、なりきらなくていいんですよ。恋の歌だからといって、好きなひとを無理に思い浮かべる必要はありません」
「そう、ですか……?」
「そうですよ」
そうか。先生は、誰か好きな人いないの、とは言わないんだ。
誰か好きな人いないの。
芸能人でもいいんじゃない?
他のパートの男の子で気になる子いないの?
先輩団員たちには、悪気はなかったのだろう。助言しようとしてくれたなかで、少し盛り上がっただけ。
でも、居心地が悪かった。地方大会を突破するためとはいえ、いたずらにプライベートをいじられたくない。
「ええっ、いませんよー!」となんとか笑って返したものの、結局解決しないまま、今日になってしまったのだけれど。
先生の言葉を選んだ礼儀正しさが、胸にひたりと落ちた。
「この歌は、ひたむきさがあればいいんです。あなたは充分ひたむきに歌っています」
だから、今のままでもだいじょうぶです。
「たとえ誰かに宛てて歌うにしても、その誰かは好きなひとではなくて、思いつきやすいひとでもいいんですよ」
それこそ家族でも、ご友人でも、ペットでも。
「ぼくなら目の前にいます。指揮を見るついでに顔でも見れば、頑張って誰かを思い浮かべなくても、イメージたっぷりに歌えるでしょう?」
「別に、なりきらなくていいんですよ。恋の歌だからといって、好きなひとを無理に思い浮かべる必要はありません」
「そう、ですか……?」
「そうですよ」
そうか。先生は、誰か好きな人いないの、とは言わないんだ。
誰か好きな人いないの。
芸能人でもいいんじゃない?
他のパートの男の子で気になる子いないの?
先輩団員たちには、悪気はなかったのだろう。助言しようとしてくれたなかで、少し盛り上がっただけ。
でも、居心地が悪かった。地方大会を突破するためとはいえ、いたずらにプライベートをいじられたくない。
「ええっ、いませんよー!」となんとか笑って返したものの、結局解決しないまま、今日になってしまったのだけれど。
先生の言葉を選んだ礼儀正しさが、胸にひたりと落ちた。
「この歌は、ひたむきさがあればいいんです。あなたは充分ひたむきに歌っています」
だから、今のままでもだいじょうぶです。
「たとえ誰かに宛てて歌うにしても、その誰かは好きなひとではなくて、思いつきやすいひとでもいいんですよ」
それこそ家族でも、ご友人でも、ペットでも。
「ぼくなら目の前にいます。指揮を見るついでに顔でも見れば、頑張って誰かを思い浮かべなくても、イメージたっぷりに歌えるでしょう?」