おおっぴらでひそやかな、恋の伝え方
先生が手を挙げる。

指先が落ちるのに合わせて、息を飲むような、それでいて伸びやかな高音を鳴らした。


まるで熱に浮かされるかのような気分だった。


頭はどこかぼうっとしているのに唇は冴え渡って、正確に音をのせる。

もらった言葉が頭の隅で蘇っては流れていく。


『今日は、ぼくのために歌ってください』


恋に落ちる音を歌った。このひとのために、恋の歌を歌った。
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