貴方の残り香〜君の香りを狂おしいほど求め、恋しく苦しい〜
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 友人に誘われるがままクラブについてきた真梨子だったが、到着してからずっと知らない男たちに声をかけられるという現状に、正直うんざりしていた。

 原因はわかってる。どうせ元彼が余計なことを吹聴しているに違いない。だってここはあいつがよく出入りしている店だから。

 今日だって本当は来るつもりはなかった。でも友人の茜がしつこく誘うから、仕方なくついて来たのだ。もちろん、あいつがいたら帰るのを前提に。

 だけどあいつがいてもいなくても、ここは居心地が悪くて仕方ない。

 酒と汗と嘘の香りがフロア全体を包み込んでいるような気がして吐き気がする。

 ただでさえ夏の暑さで鬱陶しいのに、それをフロアの熱気が上回っているようにすら思う。

 真梨子は壁に寄りかかり、先程から姿を消した茜を気にしながら、帰るタイミングを伺っていた。

 もし茜を連れていった男がとんでもない奴だったらと思うと、心配で帰るに帰れなかったのだ。

 こうなるなら、もう一人くらい連れてくるんだった……。後悔先に立たずとはこういうことなのね……真梨子はため息をつく。
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