貴方の残り香〜君の香りを狂おしいほど求め、恋しく苦しい〜
少しだけ食器を買い足し、スーパーを回りながら買い物を済ませる。
家に戻ってから食材を冷蔵庫にしまい、新しい食器類も片付けていく。
ホテルから運んだ荷物をクローゼットにしまおうと寝室に入ると、キングサイズのベッドに思わず唸ってしまった。広いベッドは嬉しい。でも……これからここで寝るっていうことよね。そう考えると、急に恥ずかしくなる。
それから集中して片付けをしていくと、あっという間に夜になっていた。
真梨子はふとバルコニーに出て、窓から見える濃紺の空を見つめた。夜風が冷たく、肌に突き刺さるようだ。
あの家にいた時はカーテンを開けて空を見ようなんて気にはならなかった。星が見えると思っていたけど、実際はほとんど見えていない。
明るすぎるのね……私はようやく現状を理解し始めていた。やっと現実と向き合える心持ちになってきたのかもしれない。
「真梨子? 寒くないのか?」
開けたままの窓から譲が顔を出し、真梨子を背後から抱きしめた。その肌の温もりに、真梨子は力が抜けていく。
「あぁ、ごめんなさい。窓を開けたままだった」
「それはいいけど……何か思うことでもあった?」
譲に問いかけられ、真梨子は口元を綻ばせる。本当によく気付くのよね。
「うん……まぁいろいろね……。私は自分のテリトリーの中でしか生活をしてなくて、狭い世界に縛られてたなと思ったの。おかしいって思った時点でもっと自分から世界を広げれば良かった……時間を無駄にしちゃったわ……」
「……そうかもしれないけど、ちゃんと気付けたじゃないか。そして自分で行動した。今真梨子は自分の意思で動いてるんじゃないのか?」
「うん……そうね……」
譲の手にそっと触れ、頬に寄せる。なんだろう、彼に与えられるこの安心感は……。これが包容力っていうものなのかもしれない。
「……私ね、結婚する時にゴタゴタして、自分の両親に十年会ってないの……だからちゃんと挨拶しに行きたい……十年の時間を埋めたいの」
「じゃあまずはそれを叶えないとな」
譲は微笑んだ。あんなにやる気をなくしていたのに、今はやりたいことが少しずつ増えてきている気がする。これからはそれらを一つずつ叶えていきたい。
家に戻ってから食材を冷蔵庫にしまい、新しい食器類も片付けていく。
ホテルから運んだ荷物をクローゼットにしまおうと寝室に入ると、キングサイズのベッドに思わず唸ってしまった。広いベッドは嬉しい。でも……これからここで寝るっていうことよね。そう考えると、急に恥ずかしくなる。
それから集中して片付けをしていくと、あっという間に夜になっていた。
真梨子はふとバルコニーに出て、窓から見える濃紺の空を見つめた。夜風が冷たく、肌に突き刺さるようだ。
あの家にいた時はカーテンを開けて空を見ようなんて気にはならなかった。星が見えると思っていたけど、実際はほとんど見えていない。
明るすぎるのね……私はようやく現状を理解し始めていた。やっと現実と向き合える心持ちになってきたのかもしれない。
「真梨子? 寒くないのか?」
開けたままの窓から譲が顔を出し、真梨子を背後から抱きしめた。その肌の温もりに、真梨子は力が抜けていく。
「あぁ、ごめんなさい。窓を開けたままだった」
「それはいいけど……何か思うことでもあった?」
譲に問いかけられ、真梨子は口元を綻ばせる。本当によく気付くのよね。
「うん……まぁいろいろね……。私は自分のテリトリーの中でしか生活をしてなくて、狭い世界に縛られてたなと思ったの。おかしいって思った時点でもっと自分から世界を広げれば良かった……時間を無駄にしちゃったわ……」
「……そうかもしれないけど、ちゃんと気付けたじゃないか。そして自分で行動した。今真梨子は自分の意思で動いてるんじゃないのか?」
「うん……そうね……」
譲の手にそっと触れ、頬に寄せる。なんだろう、彼に与えられるこの安心感は……。これが包容力っていうものなのかもしれない。
「……私ね、結婚する時にゴタゴタして、自分の両親に十年会ってないの……だからちゃんと挨拶しに行きたい……十年の時間を埋めたいの」
「じゃあまずはそれを叶えないとな」
譲は微笑んだ。あんなにやる気をなくしていたのに、今はやりたいことが少しずつ増えてきている気がする。これからはそれらを一つずつ叶えていきたい。