貴方の残り香〜君の香りを狂おしいほど求め、恋しく苦しい〜
どうして両方手に入らないんだろう……。
譲は手の力を緩めると、真梨子の手を引いてベッドに腰掛ける。そして自身の膝の上に彼女を座らせる。
「見かけによらず真面目なんだな」
笑いながら真梨子の眉間の皺を人差し指でつつく。
「真面目な真梨子にとって、セフレっていう言い方が良くないのかもな。じゃあ友達になろう。普通の友達より、少し範囲が広い友達。普通に遊んだっていいし、遊びの延長でセックスもする」
「……それってセフレじゃない」
「でもその前に友達だ」
なんだかいいように言いくるめられてる気がするのは気のせいだろうか。ただ少し心が軽くなったことは確かだった。
「友達ね……。わかった。ただ一つ約束して」
「約束?」
「そう。どちらかに本命が出来たら終わらせること」
「……本当に真面目だな。まぁわかったよ」
二人は携帯電話のIDを交換してからホテルを後にする。ホテルの目の前に地下鉄への入口があったため、真梨子は譲に手を振ると階段を降り始めた。
「たぶんすぐ連絡するよ」
振り返ると譲がいたずらっぽく笑っていた。
「わかった。待ってる」
新しい友達が出来たからだろうか。真梨子は久しぶりに楽しい気分になっていた。