貴方の残り香〜君の香りを狂おしいほど求め、恋しく苦しい〜
 それから数日も経たないうちに、真梨子は譲に呼び出された。

 直接ホテルだったらもしかしたら断ったかもしれない。しかし彼が待ち合わせに選んだのは、意外にも映画館だった。

 大学終わりからのレイトショー。本当に映画を観るの? 彼の真意がわからず、真梨子は不安な気持ちを抱きながら立ち尽くす。

 譲と"友達"の約束をしたって、元々の性格は変えられない。セフレなんて、やはりいけないことのように思えて仕方なかった。

 真梨子は腕時計を見る。約束の時間まであと五分……帰ってしまおうか。

 ここは商業施設の最上階にあるため、たくさんの人が出入りしている。その中から譲を探す気にもなれず、ふと目を伏せた。

 先の見えない関係。これで良かったのかまだわからなかった。
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