貴方の残り香〜君の香りを狂おしいほど求め、恋しく苦しい〜
* * * *
結婚式から二カ月が経とうとしていた。譲は相変わらず優しいし、毎日のように愛を囁いてくれる。
いつも通りといえばその通りだった。だがいつもと違うことが、真梨子の体に起こっていたのだ。
先ほど薬局で購入した紙袋を手に、ソファに座る。時計を見れば、譲の帰宅時間まであと少しだった。
ため息をついてから紙袋を開け、中から妊娠検査薬を取り出した。
生理が遅れているのはわかっていた。もしかしたらという期待をしつつも、勘違いかもしれないという不安もある。だからこそ二本入りのものを購入したのだ。
だってずっと子どもが出来なかったのよ? まぁレスだったという事実もあるけど、それでもこんなにトントン拍子にいく?
真梨子は箱から説明書を取り出すと、顔をしかめながら読み耽る。朝の方がいいって書いてあるけど、夜でも大丈夫かしら? もし違っていたからガッカリするから、とりあえず期待はしないでやるだけやってみようかな……。
その時だった。背後から伸びてきた手に、説明書を奪われてしまったのだ。驚いて取り戻そうとしたが、譲はそれを見て驚いたように目を見開いた。
「真梨子……これは?」
まさか譲が帰ってきたことに気付かないくらい、集中して読んでたなんて……。
「じ、実は……生理が遅れてるみたいで、まだ来ないの……。あのっ……ほら、間違えてたらガッカリするし、だから……」
思わず口籠る真梨子の肩を掴み、譲はキラキラした表情で真梨子を見る。
「もう試した?」
「えっ、いや、まだ……」
「じゃあ今すぐやってみよう! 大丈夫。どんな結果でもいいじゃないか」
嬉しそうに話す彼を見て、真梨子は背中を押されるように頷く。
「一緒トイレに行ってもいいけど」
「それはいいわ。ここで待ってて」
「わかったよ。でも絶対に先に見ないで。二人で確認しよう」
真梨子はトイレに入ると検査薬の袋の封を切り、手順通りに行う。それから再び袋に戻し、譲の元に戻った。
ソファに座ろうとすると、譲は自分の膝の上に真梨子を座らせる。彼女の手から検査薬の袋を受け取ると、それをテーブルに置いた。
「不安? なんか表情が硬いけど」
「……だって……こんなことって初めてだから……。まさか結婚してすぐに検査薬を買うことになるなんて、全く想像してなかったの。もし本当に妊娠してたら嬉しいわ。でももし間違いだったら悲しいし……」
譲は真梨子にキスをすると、にっこり微笑んだ。
「そんなことだってあるさ。出来てなかったらもっとイチャイチャすればいいことだろ? 焦らなくていいんだよ」
何度この人の言葉に救われただろう。真梨子は胸が温かくなり、譲に抱きつきキスをする。火がついた譲から貪るようにキスを繰り返され、真梨子は何も考えられなくなる。
譲は真梨子の唇を舌でなぞりながら、テーブルの上の検査薬に手を伸ばす。
「よし、じゃあ確認してみようか」
真梨子が頷くと、譲はゆっくり袋から検査薬を取り出す。丸い窓の中にくっきりと線が出ているのを見た途端、譲は嬉しそうに彼女の体をきつく抱きしめた。
「すごいじゃないか!」
真梨子は驚いたように何度もその画面を見返すと、ポロポロと大粒の涙が溢れ出した。
「どうしよう……すごく嬉しい……!」
譲にしがみついて泣き続ける真梨子の頭を優しく撫でながら、譲は彼女の額に口づける。
「真梨子……ありがとう。君には感謝しかないよ」
「えっ……?」
「君がいなかったらこんな喜びを知ることはなかった。守るべき人がいること、これから出来ることが、こんなに嬉しいことだって教えてくれたのは真梨子だよ。君に出会えて良かった……ありがとう」
真梨子は首を横に振る。
「それは私も同じよ。いつもわたしの想いを尊重してくれてありがとう……」
この人となら同じ方向を見て歩いていける、同じ道を手を取り合って進んでいけると思える。
愛に一番も二番もないのかもしれない。だって大きさも形も人それぞれ。家族が増えれば、愛する人だって増えていく。
誰かを大切にしたいという想いがあれば、きっとそれは愛なんだと思うの。
結婚式から二カ月が経とうとしていた。譲は相変わらず優しいし、毎日のように愛を囁いてくれる。
いつも通りといえばその通りだった。だがいつもと違うことが、真梨子の体に起こっていたのだ。
先ほど薬局で購入した紙袋を手に、ソファに座る。時計を見れば、譲の帰宅時間まであと少しだった。
ため息をついてから紙袋を開け、中から妊娠検査薬を取り出した。
生理が遅れているのはわかっていた。もしかしたらという期待をしつつも、勘違いかもしれないという不安もある。だからこそ二本入りのものを購入したのだ。
だってずっと子どもが出来なかったのよ? まぁレスだったという事実もあるけど、それでもこんなにトントン拍子にいく?
真梨子は箱から説明書を取り出すと、顔をしかめながら読み耽る。朝の方がいいって書いてあるけど、夜でも大丈夫かしら? もし違っていたからガッカリするから、とりあえず期待はしないでやるだけやってみようかな……。
その時だった。背後から伸びてきた手に、説明書を奪われてしまったのだ。驚いて取り戻そうとしたが、譲はそれを見て驚いたように目を見開いた。
「真梨子……これは?」
まさか譲が帰ってきたことに気付かないくらい、集中して読んでたなんて……。
「じ、実は……生理が遅れてるみたいで、まだ来ないの……。あのっ……ほら、間違えてたらガッカリするし、だから……」
思わず口籠る真梨子の肩を掴み、譲はキラキラした表情で真梨子を見る。
「もう試した?」
「えっ、いや、まだ……」
「じゃあ今すぐやってみよう! 大丈夫。どんな結果でもいいじゃないか」
嬉しそうに話す彼を見て、真梨子は背中を押されるように頷く。
「一緒トイレに行ってもいいけど」
「それはいいわ。ここで待ってて」
「わかったよ。でも絶対に先に見ないで。二人で確認しよう」
真梨子はトイレに入ると検査薬の袋の封を切り、手順通りに行う。それから再び袋に戻し、譲の元に戻った。
ソファに座ろうとすると、譲は自分の膝の上に真梨子を座らせる。彼女の手から検査薬の袋を受け取ると、それをテーブルに置いた。
「不安? なんか表情が硬いけど」
「……だって……こんなことって初めてだから……。まさか結婚してすぐに検査薬を買うことになるなんて、全く想像してなかったの。もし本当に妊娠してたら嬉しいわ。でももし間違いだったら悲しいし……」
譲は真梨子にキスをすると、にっこり微笑んだ。
「そんなことだってあるさ。出来てなかったらもっとイチャイチャすればいいことだろ? 焦らなくていいんだよ」
何度この人の言葉に救われただろう。真梨子は胸が温かくなり、譲に抱きつきキスをする。火がついた譲から貪るようにキスを繰り返され、真梨子は何も考えられなくなる。
譲は真梨子の唇を舌でなぞりながら、テーブルの上の検査薬に手を伸ばす。
「よし、じゃあ確認してみようか」
真梨子が頷くと、譲はゆっくり袋から検査薬を取り出す。丸い窓の中にくっきりと線が出ているのを見た途端、譲は嬉しそうに彼女の体をきつく抱きしめた。
「すごいじゃないか!」
真梨子は驚いたように何度もその画面を見返すと、ポロポロと大粒の涙が溢れ出した。
「どうしよう……すごく嬉しい……!」
譲にしがみついて泣き続ける真梨子の頭を優しく撫でながら、譲は彼女の額に口づける。
「真梨子……ありがとう。君には感謝しかないよ」
「えっ……?」
「君がいなかったらこんな喜びを知ることはなかった。守るべき人がいること、これから出来ることが、こんなに嬉しいことだって教えてくれたのは真梨子だよ。君に出会えて良かった……ありがとう」
真梨子は首を横に振る。
「それは私も同じよ。いつもわたしの想いを尊重してくれてありがとう……」
この人となら同じ方向を見て歩いていける、同じ道を手を取り合って進んでいけると思える。
愛に一番も二番もないのかもしれない。だって大きさも形も人それぞれ。家族が増えれば、愛する人だって増えていく。
誰かを大切にしたいという想いがあれば、きっとそれは愛なんだと思うの。