貴方の残り香〜君の香りを狂おしいほど求め、恋しく苦しい〜
お互いに就職先での研修などもあり、二人で会うのは久しぶりだった。
しかも今日は初めて体の関係を結んだあのホテルのあの部屋だった。
ある決意をしていた真梨子にとっては、不思議な縁を感じずにはいられなかった。
二人は居ても立っても居られず、ドアが閉まるのも待たずにキスをし、衝動に駆られ、立ったまま交わる。
そのまま浴室でも求め合い、ようやくベッドに辿り着く。
彼は私を抱く間、名前しか呼ばない。愛の囁きなんてあり得ない。だって私たちの間に存在しないものだから……。
それは違うか……私の中には存在するけど、あなたの中には存在しない感情。それが悲しいの。
行き場を無くした私の愛は、今後どこに行き着くのかしら……。
少しでも長く彼と繋がっていたい。その一心で譲の体に必死にしがみつく。あなたのこの香りに包まれている時間を、私は心と体に刻みつけて、大事な思い出にするの。
譲が顔を歪ませ果てると、真梨子の隣に倒れ込む。大きく弾む胸に、真梨子は頬をすり寄せる。
今日で最後にするから……真梨子は譲に口づけると、絡み合うようなキスを繰り返す。
あなたが好きよ……言えない言葉を、キスと共に飲み込んでいく。
彼をベッドに残したまま、シャワーも浴びずに服を着る。カバンを持って振り返ると、真梨子は譲に微笑みかける。
「来月からはお互い社会人だし、もう終わりにしましょう」
ベッドに寝転がったままの譲は、目を見開いて真梨子を見た。
「今までありがとう。元気でね」
「えっ……真梨子……!」
真梨子は振り返らずに急いで部屋を出ると、階段を駆け降りる。
ホテルを出てから、地下鉄のホームには向かわず人混みの中を走り抜けていく。
大通りに出ると、真梨子は陸橋の階段の下に身を潜めるようにしゃがみ込んだ。
涙が止まらなかった。大粒の涙と共に嗚咽が漏れる。
そんな簡単に割り切れるような気持ちじゃなかった。確かにいつも体は満たされていた。でも彼といる時間が楽しくて、意外にも心も満たされていたの。
きっとこの気持ちを振り切るには時間がかかるだろう。だってこんなに好きが消えない。
キスをしながら飲み込んだ『好き』が身体中から溢れてしまいそうだった。
彼の香りを思い出し、締め付けられる胸に拳をギュッと押し付け、真梨子は人目もはばからずに声を上げて泣き続けた。
私の恋は、始まりの場所で終わりを迎えたのだ。
しかも今日は初めて体の関係を結んだあのホテルのあの部屋だった。
ある決意をしていた真梨子にとっては、不思議な縁を感じずにはいられなかった。
二人は居ても立っても居られず、ドアが閉まるのも待たずにキスをし、衝動に駆られ、立ったまま交わる。
そのまま浴室でも求め合い、ようやくベッドに辿り着く。
彼は私を抱く間、名前しか呼ばない。愛の囁きなんてあり得ない。だって私たちの間に存在しないものだから……。
それは違うか……私の中には存在するけど、あなたの中には存在しない感情。それが悲しいの。
行き場を無くした私の愛は、今後どこに行き着くのかしら……。
少しでも長く彼と繋がっていたい。その一心で譲の体に必死にしがみつく。あなたのこの香りに包まれている時間を、私は心と体に刻みつけて、大事な思い出にするの。
譲が顔を歪ませ果てると、真梨子の隣に倒れ込む。大きく弾む胸に、真梨子は頬をすり寄せる。
今日で最後にするから……真梨子は譲に口づけると、絡み合うようなキスを繰り返す。
あなたが好きよ……言えない言葉を、キスと共に飲み込んでいく。
彼をベッドに残したまま、シャワーも浴びずに服を着る。カバンを持って振り返ると、真梨子は譲に微笑みかける。
「来月からはお互い社会人だし、もう終わりにしましょう」
ベッドに寝転がったままの譲は、目を見開いて真梨子を見た。
「今までありがとう。元気でね」
「えっ……真梨子……!」
真梨子は振り返らずに急いで部屋を出ると、階段を駆け降りる。
ホテルを出てから、地下鉄のホームには向かわず人混みの中を走り抜けていく。
大通りに出ると、真梨子は陸橋の階段の下に身を潜めるようにしゃがみ込んだ。
涙が止まらなかった。大粒の涙と共に嗚咽が漏れる。
そんな簡単に割り切れるような気持ちじゃなかった。確かにいつも体は満たされていた。でも彼といる時間が楽しくて、意外にも心も満たされていたの。
きっとこの気持ちを振り切るには時間がかかるだろう。だってこんなに好きが消えない。
キスをしながら飲み込んだ『好き』が身体中から溢れてしまいそうだった。
彼の香りを思い出し、締め付けられる胸に拳をギュッと押し付け、真梨子は人目もはばからずに声を上げて泣き続けた。
私の恋は、始まりの場所で終わりを迎えたのだ。