貴方の残り香〜君の香りを狂おしいほど求め、恋しく苦しい〜

 卒業式の日に、譲に似た副島(そえじま)(たくみ)に告白されたが、真梨子は当然のように断った。

 だが心の底では、まるで譲に告白されたかのような喜びの感情が生まれていたことに、真梨子自身が驚いた。

 今更になって、譲に告白しなかった後悔が生まれてきている。もしフラれたとしても、それなら諦めがついたのかもしれない。

 人は行動したことより、しなかったことへの後悔の方が大きいと聞いたことがある。本当にその通りだわ。

 手に入らなかった恋の重さに潰されてしまいそうだった。

 そんな真梨子の苦しい心の内に晃は優しくそっと入り込み、温かく慰めてくれた。

 それから交際を始めて一年ほどした頃、真梨子は晃から告白を受けたレストランでプロポーズをされ、彼との結婚を決意したのだ。
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