貴方の残り香〜君の香りを狂おしいほど求め、恋しく苦しい〜
壊れる
結婚して四年、セックスレスになって二年。真梨子は街中で思わぬ再会を果たした。
明日の朝食のパンを買おうと、最寄駅のベーカリーへ立ち寄った時だった。
「あれっ、もしかして野中先生⁈」
最寄り駅で名前を呼ばれることのなかった真梨子は、驚いて振り返る。するとそこには懐かしい顔の青年が立っていた。
「もしかして副島くん?」
「わっ、覚えていてくれたんですね! まぁあんな告白しちゃったし、違う意味で記憶に残ってたかな」
にっこり微笑んだ彼の顔を見て、真梨子の中に突然別の男の顔が蘇ってきた。
そうだ、在学中にも感じていたじゃない。年を重ね、更に譲に似てきたように思う。
真梨子の提案で二人は近くのカフェに入ると、どちらからともなく話し始める。
「偶然ね。この辺に住んでるの?」
「いや、大学の友達の家に行ってて。帰ろうと思ったら、先生に似た人がいたから声かけたんです。まさか本人だとは思わなかった」
「あれから四年か……ということは、今は二十二才?」
「そうです。一応就職も決まったし、今は悠々自適に過ごしてます」
二十二才と聞いて、真梨子の胸が高鳴った。出会った時の譲と同じ年齢。彼もこんな感じだったかしら……そう思うと、心がざわついた。
「あぁ、御実家のホテル?」
彼の実家はホテルを経営している。そこに就職したのかと思うと、匠は首を横に振った。
「いえ、別のホテルに。あそこは兄が継ぐし、なんか敷かれたレールは嫌だなって思って……。でも兄に早いうちに戻れって言われてるので、いずれは敷かれたレールに戻る予定ですけどね」
苦笑いをする匠を見ながら、真梨子は息が苦しくなるのを感じていた。
明日の朝食のパンを買おうと、最寄駅のベーカリーへ立ち寄った時だった。
「あれっ、もしかして野中先生⁈」
最寄り駅で名前を呼ばれることのなかった真梨子は、驚いて振り返る。するとそこには懐かしい顔の青年が立っていた。
「もしかして副島くん?」
「わっ、覚えていてくれたんですね! まぁあんな告白しちゃったし、違う意味で記憶に残ってたかな」
にっこり微笑んだ彼の顔を見て、真梨子の中に突然別の男の顔が蘇ってきた。
そうだ、在学中にも感じていたじゃない。年を重ね、更に譲に似てきたように思う。
真梨子の提案で二人は近くのカフェに入ると、どちらからともなく話し始める。
「偶然ね。この辺に住んでるの?」
「いや、大学の友達の家に行ってて。帰ろうと思ったら、先生に似た人がいたから声かけたんです。まさか本人だとは思わなかった」
「あれから四年か……ということは、今は二十二才?」
「そうです。一応就職も決まったし、今は悠々自適に過ごしてます」
二十二才と聞いて、真梨子の胸が高鳴った。出会った時の譲と同じ年齢。彼もこんな感じだったかしら……そう思うと、心がざわついた。
「あぁ、御実家のホテル?」
彼の実家はホテルを経営している。そこに就職したのかと思うと、匠は首を横に振った。
「いえ、別のホテルに。あそこは兄が継ぐし、なんか敷かれたレールは嫌だなって思って……。でも兄に早いうちに戻れって言われてるので、いずれは敷かれたレールに戻る予定ですけどね」
苦笑いをする匠を見ながら、真梨子は息が苦しくなるのを感じていた。