貴方の残り香〜君の香りを狂おしいほど求め、恋しく苦しい〜
どの表情を見ても、譲を重ねて見てしまう。一番欲しかったのに、手に入らなかった人。その人にそっくりな人が私の前にいて、四年前に私を好きだと言ってくれた。
それにもう生徒じゃない……。
「先生は最近どうですか? やっぱりビシビシ厳しい先生のまま?」
「どうかしら。前よりは優しくなったと思うけど」
「あはは。そういえば結婚されたんですよね? おめでとうございます。まだラブラブなのかな?」
匠の口からその言葉が出た途端、真梨子の表情が曇る。まるで譲に言われたような気持ちになって、悲しくなった。
「実は……上手くいってないの……」
それを聞いた匠は、慌てて頭を下げた。
「そ、そうとは知らず……変なこと聞いちゃってすみませんでした!」
慌てる匠を見ながら、真梨子の中に余計に邪な考えが沸々と沸き起こる。
「……ねぇ副島くん、今って彼女はいるの?」
「えっ……いや……いませんけど……。じゃあそろそろ……」
気まずくなって立ちあがろうとした匠の手を真梨子が掴んだ。
ああ、ダメよ……ダメだってわかってる……。それでも止められなかった。
「……ねぇ、これから時間ある?」
「……先生?」
「副島くんと行きたい場所があるの……」
そして私は壊れ始めた……。