貴方の残り香〜君の香りを狂おしいほど求め、恋しく苦しい〜
頭上にはフロアを照らすライトだけ。うざったい人間の姿は見えない。
ここよりずっと空気が良さそうね……下にいると息が詰まる。
「そんなことしたって意味がないじゃない。否定すればした分、また憶測が広がる。それをまた否定したって、馬鹿みたいじゃない?」
「でも嫌でも耳に入るだろ?」
「それなら無視するのが一番楽よ。それにもし話しかけて来た人の中にいい男がいたらラッキーでしょ?」
真梨子の言葉を聞いて男は笑顔になったかと思うと、突然真梨子の前に立ち、いわゆる壁ドンのような体勢になる。
「君はなかなかいい女みたいだ」
「……それはどうも」
男の体が近くに寄ると、彼の香りが真梨子の鼻腔をくすぐる。シトラス系の香り。決していやらしくないのに、何故か真梨子の胸は締め付けられる。
「こうすれば君の視界を遮ることが出来る」
「でも逆に、『もう新しい男を見つけたんだ、やっぱり尻軽なんだ』って思われるかもしれないわね」
「あはは! 本当に君は面白いな。どうだろう、俺は君のお眼鏡に叶うかな?」
真梨子は男をじっと見つめる。背が高くて、少し長めの黒髪。切れ長の瞳の塩顔男子。はだけたYシャツとネクタイは、この店にそぐわない。
だからこそ、先ほどから気になっていたのだが……。
ここよりずっと空気が良さそうね……下にいると息が詰まる。
「そんなことしたって意味がないじゃない。否定すればした分、また憶測が広がる。それをまた否定したって、馬鹿みたいじゃない?」
「でも嫌でも耳に入るだろ?」
「それなら無視するのが一番楽よ。それにもし話しかけて来た人の中にいい男がいたらラッキーでしょ?」
真梨子の言葉を聞いて男は笑顔になったかと思うと、突然真梨子の前に立ち、いわゆる壁ドンのような体勢になる。
「君はなかなかいい女みたいだ」
「……それはどうも」
男の体が近くに寄ると、彼の香りが真梨子の鼻腔をくすぐる。シトラス系の香り。決していやらしくないのに、何故か真梨子の胸は締め付けられる。
「こうすれば君の視界を遮ることが出来る」
「でも逆に、『もう新しい男を見つけたんだ、やっぱり尻軽なんだ』って思われるかもしれないわね」
「あはは! 本当に君は面白いな。どうだろう、俺は君のお眼鏡に叶うかな?」
真梨子は男をじっと見つめる。背が高くて、少し長めの黒髪。切れ長の瞳の塩顔男子。はだけたYシャツとネクタイは、この店にそぐわない。
だからこそ、先ほどから気になっていたのだが……。