貴方の残り香〜君の香りを狂おしいほど求め、恋しく苦しい〜

＊　＊　＊　＊

　朝日を感じて目を覚ますと、昨夜までの寒気はなくなり、体調は良くなっていた。ただ頭の重さは残っていたため、すぐには起き上がらず布団の中でゴロゴロする。

　ふと寝返りを打った時、真梨子は隣で晃が寝た形跡がないことに気付く。

　ゆっくりと起き上がりリビングに行くが、そこには晃の姿はなかった。ただソファに潰れたクッションと掛け布団が置いてある。
　
　きっと私の風邪が感染るとでも思ったのね。

　キッチンが使われた様子がないことから、どうやら外で朝食をとることにしたようだ。

　ダイニングテーブルの上に置かれたメモに目を通すと、真梨子はただ肩を落とした。

『おはよう。今日は友人たちとゴルフに行ってきます。夜もみんなで食事をしてから帰るので、ゆっくり休んでてください。』

　妻が具合が悪くても、趣味のゴルフには行くのね。

　本当に私はあの人にとって、ただの同居人でしかないんだわ。