貴方の残り香〜君の香りを狂おしいほど求め、恋しく苦しい〜
テーブルに運ばれてきたカップを見つめた後、真梨子は口を開く。
「あなた、匠とはいつから付き合ってるの?」
「お付き合い自体は三ヶ月です。でも出会いは六年前に遡ります」
「六年前……?」
てっきりつい最近の出会いだと思っていた真梨子は衝撃を受けた。
しかも六年前といえば、匠と再会して別れを告げてきた頃だ。まさかこの子との出会いが、私との出会いて絡んでいるのだろうか。
二葉はしっかりと真梨子の目を見つめる。
「はい。私は当時の彼のことで辛い思いをしていた時期で、匠さんは……あなたとのことを悩んでいました」
「……ということは、私たちが別れる前に出会ってるわけね。私のことはどの程度知ってるのかしら?」
二葉は首を横に振る。
「ほとんど知りません。ただ夫婦仲が上手くいっていないと言われて、関係を持ってしまった……そう言ってました」
真梨子は黙ったまま、紅茶のカップに手をかける。そのまま口元に持っていくと、ゆっくりと口に含んだ。
匠にはそれ以上の話はしていない。だって言ったところで、彼に私の気持ちなんてわかりっこないじゃない。
私の苦しみは私しかわからない。言うだけ無駄なら、言わない方がマシ。