貴方の残り香〜君の香りを狂おしいほど求め、恋しく苦しい〜
この写真を見たら、晃は怒り狂うのかしら。そして私を罵倒するに決まってる。苦しみによって溢れそうになる涙をグッと堪えた。
「返して欲しかったら写真を消してください。俺はあなたのものじゃないんだ。もういい加減、解放してくれよ……」
なんて冷酷な台詞。真梨子は悔しそうに下唇を噛むと、スマホの暗証番号を伝える。匠は言われるがままスマホを操作して、写真を消去した。
無言のままスマホを手渡して来た匠の手を掴み、真梨子は腹の底から声を押し出す。
「これでお終いだと思わないでね。あなたは一生私を忘れられないんだから。せいぜい私を裏切ったことを苦しむがいいわ」
最後の呪いよ。私を不幸にして幸せになるなんて許さない。
しかしその言葉を言い放った直後、二人を引き離すかのように二葉が前に出てくると、彼女は真梨子をじっと見つめた。
「先に裏切ったのはあなたでしょ? 旦那さんがいるのに、匠さんとも関係を持った……」
何も知らないくせに……! 辛いことなんて、苦しいことなんて味わったことがないような小娘が……!
真梨子は荷物を持つと、そのまま席を立ち、走り去った。