貴方の残り香〜君の香りを狂おしいほど求め、恋しく苦しい〜

* * * *

 待ち合わせ時間にラウンジに行くと、二葉は既に到着していた。アイスコーヒーのストローを口に咥えたまま、微動だにしない。

 何を考えているのかしら。変な子。そう思いながら向かい側のソファにどさっと腰を下ろす。真梨子が座ると、二葉は驚いて体を震わせた。

 明らかに緊張した面持ちで真梨子を見つめる二葉を、無表情のまま見つめ返す。

「来てあげたわ」
「あ、ありがとうございます……」
「ねぇ、ここに来ること、匠は知ってるの?」
「はい、一応伝えました」
「そう……じゃあお店を変えましょう」
「えっ……」
「匠には会いたくないの。でもあなたを心配してくる可能性があるでしょ?」
「……わかりました」

 すると真梨子はエレベーターに向かい、最上階のボタンを押す。

 あのバーに、譲以外の誰かと入るのは初めてだった。

 そろそろ私も前に進まないといけないってことかしら。譲にも晃にも囚われない自分を見つけるべきなのかもしれない。
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