貴方の残り香〜君の香りを狂おしいほど求め、恋しく苦しい〜
真梨子はため息をつく。
「……じゃあ私はどうしたらいいのかしら……」
「……私はあなたの人生に口を出すことは出来ません。でも……あなたには自分の気持ちを大事にしてほしいです。あなたは……真梨子さんは、とても芯がしっかりして、素敵な女性だと思います。だから、真梨子さんが望む未来を選んで欲しいです。そのためなら私は匠さんに宣言して、真梨子さんの応援団になります!」
拳を握りしめる二葉を見ながら、真梨子は笑いを堪える。
「あなたって本当に面白い子ねぇ。でも……ちょっと目が覚めたかもしれない。私自身も忘れていたことを思い出した気がする……。好きだから、愛し合ってるからそばにいた。でも……確かに夫婦なのに向いてる方向が違っているのかもしれない……」
真梨子はハンカチで涙と鼻水を拭う。
「……六年前、匠にもそんな感じで話したの?」
「えっ……いや、こんな感じではないですが……」
「なるほどね。あなたに感化されたのね、きっと。あっ、でもあなた、私も匠とセックスしてるのよ。嫌だとか思わないの?」
「そうですねえ……まぁ気にならないと言えば嘘になりますけど、海外ドラマじゃよくある展開ですし」
「……あはは! 匠がベタ惚れなのもわかるわ。私も気に入ったもの。あなたの名前、教えてくれる?」
「あっ、雲井二葉です! 自己紹介が遅くてすみません……」
あぁ、そうだ、二葉ちゃんだった。あんなに躍起になって調べたのに忘れてた。真梨子は恥ずかしそうに下を向くと椅子から降りる。
「このハンカチ、もらっていい?」
「ど、どうぞ」
真梨子はカバンから財布を取り出し、自分と二葉の代金を支払う。
不思議ね、来るまでの気持ちとは全然違うの。何かが吹っ切れたように清々しい。
「……私なりに答えを出すわ。ありがとう。じゃあね」
それだけ言い残し、真梨子は颯爽と店を後にした。