貴方の残り香〜君の香りを狂おしいほど求め、恋しく苦しい〜

* * * *

 誰かと一緒にラーメンを食べただなんて、いつ以来かしら。真梨子は胃も心も満足していた。

「家まで送るよ」

 大通りを並んで歩きながら譲はそう言ったが、真梨子はきっぱりと断る。

「タクシーで帰るから平気よ」

 すると譲はすぐさまタクシーを止め、運転手にお札を渡した。

「今日は俺が引き留めたし、これくらいはさせてくれよ」

 私が断れないような言い回し。スマートなのか、相当遊んできたのか、頭には二択しか浮かばない。

「わかったわ。ありがとう」

 真梨子がタクシーに乗り込むと、譲はドアが閉まらないよう体を差し入れる。

「俺の番号は変わってないから。何かあったらいつでも連絡して」

 どことなく懇願のようにも聞こえたのは、私の勘違いだろうか。

 真梨子が笑顔で頷くと、譲はホッとしたような表情になる。そして真梨子の額に口づけた。

「おやすみ」
「ええ、おやすみなさい」

 まるであの頃に戻ったかのよう……。真梨子はキスされた額が熱くなるのを感じた。
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