貴方の残り香〜君の香りを狂おしいほど求め、恋しく苦しい〜
真梨子の表情が突如として険しくなり、青ざめていく。
「真梨子」
そこには晃が怪訝そうな顔で真梨子を見つめ、立っていた。
「家に帰ったら、君がいないから心配してたんだ」
晃が徐々に近付いてくる。真梨子は慌てて目を逸らす。
「あぁ、ごめんなさい。連絡し忘れたみたい」
「君のことだからきっとこの店じゃないかと思って見にきたら、案の定だったね」
「今友達と飲んでるところだから、先に帰っててくれる?」
晃は真梨子の言葉を聞いて眉をひそめる。
「……友達? そんな若い子が?」
「私の教え子の恋人なの。最近仲良くなったのよ」
真梨子は晃がそばに寄ろうとするのを手を出して牽制する。すると彼女のよそよそしい態度に晃は苛立ちを隠せず舌打ちをする。
それから晃は二葉に視線を移すと、ハッとした様子で口を開けた。
「もしかして君か? 真梨子に余計なことを吹き込んだのは」
「えっ……」
「晃! 彼女は関係ないわ。本当にただの友人よ」
「最近仲良くなったのなら、そうなんじゃないのか? 二人で納得したことを、君がまた持ち出してきたんだから。しかも最近は連絡もなしに外出するし……」
「あなただって何も連絡して来ないじゃない。誰もいない家に一人でいても虚しいだけなの。だったら友達に会ったっていいじゃない」
「だからそのことは……」
「えぇ、話したわ。だからもうわかったって言ったでしょ」
真梨子は晃の手を振り払うと、語気が強くなる。
「しかも帰ったら冷蔵庫も空っぽだし……」
「自分の分はちゃんと作ってるわ。お弁当もね。でも食べてくれない人のために作って捨てるだけなんて、意味がないことをやめただけ」
すると堰を切ったように真梨子の口から、言葉が溢れ出す。
「休みの日になれば、あなたは趣味のゴルフに行ってしまう。家にいれば『くだらない』と言ってニュース番組以外は消してしまう。本を読み始めれば私はいないようなもの。私が具合が悪くても、心配するのは口だけ。帰って来る頃にはもう忘れてるわよね? じゃあ私は一体何なの? 一緒にいたっていないのと同じじゃない? それって一緒にいる意味があるの? 私はこれからも満たされない想いをずっと抱えて生きていかなきゃいけないの? そんなのもう耐えられない……!」
最後まで言い終わらないうちに、真梨子はカバンを持つと晃を押し退け、バーの入口に走り出す。
「真梨子⁈」
真梨子は二葉が晃の手を掴む瞬間を目撃し、慌てて店に戻ろうとした。しかしその手を誰かに掴まれる。
振り返るとそこには譲が立っていた。
「こっちだ」
「でも……!」
「あそこには匠もいる。大丈夫だから」
彼に腕を引かれるまま階段を駆け降りると、再び階段下の部屋へと引き込まれた。
「真梨子」
そこには晃が怪訝そうな顔で真梨子を見つめ、立っていた。
「家に帰ったら、君がいないから心配してたんだ」
晃が徐々に近付いてくる。真梨子は慌てて目を逸らす。
「あぁ、ごめんなさい。連絡し忘れたみたい」
「君のことだからきっとこの店じゃないかと思って見にきたら、案の定だったね」
「今友達と飲んでるところだから、先に帰っててくれる?」
晃は真梨子の言葉を聞いて眉をひそめる。
「……友達? そんな若い子が?」
「私の教え子の恋人なの。最近仲良くなったのよ」
真梨子は晃がそばに寄ろうとするのを手を出して牽制する。すると彼女のよそよそしい態度に晃は苛立ちを隠せず舌打ちをする。
それから晃は二葉に視線を移すと、ハッとした様子で口を開けた。
「もしかして君か? 真梨子に余計なことを吹き込んだのは」
「えっ……」
「晃! 彼女は関係ないわ。本当にただの友人よ」
「最近仲良くなったのなら、そうなんじゃないのか? 二人で納得したことを、君がまた持ち出してきたんだから。しかも最近は連絡もなしに外出するし……」
「あなただって何も連絡して来ないじゃない。誰もいない家に一人でいても虚しいだけなの。だったら友達に会ったっていいじゃない」
「だからそのことは……」
「えぇ、話したわ。だからもうわかったって言ったでしょ」
真梨子は晃の手を振り払うと、語気が強くなる。
「しかも帰ったら冷蔵庫も空っぽだし……」
「自分の分はちゃんと作ってるわ。お弁当もね。でも食べてくれない人のために作って捨てるだけなんて、意味がないことをやめただけ」
すると堰を切ったように真梨子の口から、言葉が溢れ出す。
「休みの日になれば、あなたは趣味のゴルフに行ってしまう。家にいれば『くだらない』と言ってニュース番組以外は消してしまう。本を読み始めれば私はいないようなもの。私が具合が悪くても、心配するのは口だけ。帰って来る頃にはもう忘れてるわよね? じゃあ私は一体何なの? 一緒にいたっていないのと同じじゃない? それって一緒にいる意味があるの? 私はこれからも満たされない想いをずっと抱えて生きていかなきゃいけないの? そんなのもう耐えられない……!」
最後まで言い終わらないうちに、真梨子はカバンを持つと晃を押し退け、バーの入口に走り出す。
「真梨子⁈」
真梨子は二葉が晃の手を掴む瞬間を目撃し、慌てて店に戻ろうとした。しかしその手を誰かに掴まれる。
振り返るとそこには譲が立っていた。
「こっちだ」
「でも……!」
「あそこには匠もいる。大丈夫だから」
彼に腕を引かれるまま階段を駆け降りると、再び階段下の部屋へと引き込まれた。