貴方の残り香〜君の香りを狂おしいほど求め、恋しく苦しい〜
 真梨子が扉を開けると、譲はカクテルグラスを二つ載せたトレーを持っていた。

「やぁ、お疲れ様」
「ありがとう。あなたもね」
「うん、さてお嬢さん、一杯どうかな?」
「……いいの?」

 譲はにっこり微笑むと、部屋の中へと入っていき、ソファの前に置かれたローテーブルの上にトレーを置いた。

「プレゼントには気付いてもらえたみたいだな」

 開いたままのクローゼットを見ながら、楽しそうニヤニヤしている。真梨子は腕を組んで、困ったようにため息をついた。

「……どう反応していいかわからなくて、正直困ってるんだけど」
「まぁあまり深く考えないでくれよ。久しぶりに会った友達にプレゼントしたくなっただけだからさ」
「……だってすごく高いブランドの服よ」
「真梨子に似合いそうだと思ってね」
「しかも見た感じ、サイズもピッタリなのが怖い」
「いや、普通にそれくらいかなと思っただけ。そんな勘繰るなよ。『ありがとう』って受け取ってもらえたら、こっちはそれで十分だし」
「……わかったわ、ありがとう」
「どういたしまして」
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