貴方の残り香〜君の香りを狂おしいほど求め、恋しく苦しい〜

* * * *

 目を覚ました真梨子は、自分の置かれている状況に戸惑った。譲に抱きしめられたまま、ベッドで眠っていたのだ。

 見上げれば譲の寝顔がある。懐かしくなって彼の頬に手を添えると、譲がそっと目を覚ました。

「ん……おはよう、真梨子」
「……おはよう。昨日はベッドまで運んでくれたのね、ありがとう。でも帰らなくて大丈夫だったの?」
「うん……ちょっと余韻に浸りたかったんだ。それに目が覚めた時に、俺がいないと真梨子が寂しいかと思って」

 その時譲の手が、真梨子の下半身へと伸びてきたため、その手を制する。譲は笑いながら真梨子の頬にキスをした。

「これから仕事よ。準備しないと」
「わかってるって。シャワー使っていいか?」
「どうぞ」
「真梨子も一緒に入る?」
「お一人でどうぞ」
「あはは! 了解、真梨子様」

 シャワーの音が聞こえてくると、真梨子は恥ずかしさのあまりベッドに顔を押し付けた。

 なんてことをしてしまったんだろう……それなのに、後悔よりも幸せを感じてしまっている私は罪深い。
< 97 / 144 >

この作品をシェア

pagetop