西園寺先生は紡木さんに触れたい
「そうね…それについてもだけど…本当に就職でいいの?」
「…まあ、私はお母さんみたいに、看護師になりたいとか、そういうのもないしさ。」
そう笑って言う紡木に、母は怪訝な顔をした。
「…でも、お母さんはやっぱり大学は出ておいた方がいいって…。」
そう言う母の言葉を紡木は「いいってば。もう。決今更でしょ。」と遮った。
本当にやりたいことはないんだ。
そう心の奥底から思っているはずなのに何故だか胸が苦しくて、涙が出てきそうだった。
母はこれ以上紡木に聞いても無駄だと思ったのか、「それならいいわ。」とソファから立ち上がった。
「何かあったら今度はすぐにお母さんに連絡してね。そのまま病院に来てもいいんだから。」
そう言うと母は寝室へと消えていった。
その背中を見送ると、紡木もゆっくりと立ち上がって自室へと戻っていった。