西園寺先生は紡木さんに触れたい
とは言ったものの…。



月曜日になって、メイクを頑張った自分で西園寺をデートに誘おうと意気込んだはずなのに、気づけば今日は水曜日で時刻はもう放課後だ。


紡木は手に握りしめた携帯をおもむろにタップして、西園寺とのトークルームを開くところまでは何百回もいけるのに、万が一断られた時のことを考えると指が止まる。


ふう、と深いため息をついてベンチの背もたれに体を預けて空を仰いだ。


ただ『デートに行ってください。』って言うだけなのになんでできないんだろう。



紡木が自分の非力さに涙を溜めていると、「よっ、浪人生。」という声が上から降ってくるとともに牧野がヌッと顔を覗き込んできた。
< 333 / 367 >

この作品をシェア

pagetop