西園寺先生は紡木さんに触れたい
「えっと、あの、進路というのは…。」
化学準備室に向かう廊下の途中でどうしても気になった紡木は先を行く西園寺の背中にそう投げかけた。
すると西園寺はぴたりと足を止め、「…ごめん。」と呟いた。
その言葉の意味がわからず紡木は首を傾げると、西園寺は背を向けたまままたぽつりと呟いた。
「やっぱりなんでもない。勘違いしちゃってた。」
「え…?」
「用はないからもう帰って良いよ。」
いつになく冷たく言い放つ紡木は不安と焦りで歩き出そうとする背中に「あのっ!」と叫んだ。
「先生は、私のことを守ってくれるんですよね?」
紡木の言葉に急に何を言い出すのか、と驚いた西園寺は思わず彼女の方に振り向いた。