西園寺先生は紡木さんに触れたい

紡木さんはきっと牧野くんが好きだ。


だからきっとメイクも勉強して、可愛くなったんだ。


悔しさと切なさとで叫びたくなる自分と、紡木さんが幸せならそれでいいじゃないかと言い聞かせる自分に両側から挟まれて、押しつぶされて、死にそうだ。


西園寺は必死になって涙を堪えるとふう、と長く息を吐き出して天井を見上げた。


実はちょっといい感じなのでは?と思ったりもしていた。


紡木さんと夜道を歩いた日。


あの日、紡木さんは俺の手を避けなかった。


その後、俺のおかげだって夢を打ち明けてくれた。


でも。


『大変だなあ…恋って。』


吉田さんと3人でご飯を食べていた時、颯爽と準備室を抜け出した紡木さんが屋上で1人呟いていた言葉。



あの時からもしかして…好きだったのか。



西園寺の口から再び盛大なため息が漏れた。


馬鹿だなあ、そんなことに気づかずに俺は…。


西園寺は限界を迎えた瞼をゆっくり閉じた。瞼の隙から堪えられなかった涙が溢れた。



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